紀の川市の坐像など3件 和歌山県の文化財に
県教委は17日の定例会で、紀の川市平野の観音寺の木造菩薩形(ぎょう)坐像など、3件を県の文化財に指定した。今回の指定により、県指定文化財は全574件になった。
県指定文化財となったのはこの他、田辺市教委所有、田辺市立歴史民俗資料館に保管されている後ロ谷(うしろだに)銅鐸、白浜町の長寿寺が所有し、県立博物館に保管されている長寿寺備前焼大甕。
本紙エリアで指定を受けた木造菩薩形坐像は、観音寺住職が不在のため、佃・林ヶ峰(はいがみね)町内会が所有し、県立博物館が保管している。
高さは25・8㌢で、9世紀中頃に制作されたもの。頭髪を束ね、条帛(じょうはく)や裳、帯状の衣装を身に着け、レンゲの花をかたどった台座に座った像。ヒノキと見られる木材で彫られている。
観音寺が所在する旧平野村は、かつて静川荘と呼ばれた荘域に当たり、近世には、高野山と直接的な関係があったと確認されている。同像は、天皇や皇后が制作に関わった国宝級の仏像の造りと類似点が多い。高野山や山麓地域の歴史・仏教の実態を考える上で、平安時代前期の希少な密教彫像として重要な資料という。
後ロ谷銅鐸は、平成8年に田辺市三栖で発見された約100㌢の大形の銅鐸。弥生時代後期に制作されたと見られ、鋳造に関係する技法も多く使われている。これ以外で県内の同型式の銅鐸の出土は、上富田町岩崎で発見された銅鐸のみで、極めて貴重という。
長寿寺備前焼大甕は、日置川河口部右岸から昭和36年に出土。「暦応伍年」(1342年)の文字や仏画が刻まれており、制作年が分かる備前焼の中で最古、図像が描かれた珍しく学術的価値が高い資料とされた。