若手「匠」の県代表に 根来塗の松江さん
日本各地で新しいものづくりに取り組む若き匠(たくみ)をサポートし、全国、世界へと発信する「レクサス・ニュー匠プロジェクト」で、岩出市で伝統工芸を受け継ぐ根来塗曙山会の松江那津子さん(34)が県の代表に選ばれた。松江さんは今後、支援を受けながら根来寺根来塗眉間寺三ツ椀(みけんじみつわん)の制作に取り組む。
同プロジェクトは、トヨタ自動車と同社の高級車ブランド・レクサスの販売会社が主催。作り手の才能を育てようと、地域の伝統的な技術や風土などの特色を生かしながら、自由な発想でものづくりに取り組んでいる人物を支援する。
根来塗伝承者である池ノ上曙山さん(56)は4月にレクサスからプロジェクトの連絡を受け、弟子の松江さんを推薦。候補者の中から「地域への貢献、影響度」「プロダクトの質・クオリティ」「将来性、成長への期待度」などの選考基準に基づき、全国47都道府県から52人が選ばれた。
松江さんは海南市出身、大阪府立大学農学部で樹木について勉強。2013年4月、岩出市伝統伝承事業根来塗講座に参加し、講座の上級を首席で修了した。講座を受ける中で根来塗に魅了され、職人の道を志すようになり、現在は同講座の講師を担当しながら、根来塗の作品を制作している。
根来寺根来塗に携わってまだ4年だが、師の曙山さんは「二十数年間で、一番のセンス」と才能を評価する。従来なら3カ月かかる作業をわずか1日で修了。さらに10年かかる技法は3年で習得した。松江さんは「作業に没頭している時間がとても楽しい」と笑顔で話す。
松江さんが今回制作する眉間寺三ツ椀は、天目型の木の器。中世期に多く、根来塗では代表的な椀の一つとされる。中世の技法を用いるため、剥離や欠けがほとんどなく、熱い物を直接入れることができる。近年は重く割れやすい飯椀が多いことから、日本人本来の食べ方である「背筋を伸ばし器を持ち上げて食すスタイル」を目指し、3つの組椀として作り上げる。
7月29日には、中芝正幸市長を訪問した松江さん。「岩出を代表する根来塗として、頑張ってください」と激励を受けた。曙山さんは「和歌山の工芸家の若手の代表」と愛弟子の選出を喜ぶ。松江さんは「県の代表の名に恥じないよう、良い作品をつくりたい」と話している。