JR和歌山線の乗客増へ 那賀高生が動画
JR和歌山駅構内の案内画面で、県立那賀高校(岩出市高塚、歌保晴校長)放送部が制作した和歌山線PR動画が放映されている。全6編で構成され、現在流れているのは第2弾「初夏~いつもとなりに編」。沿線の駅で働く新人駅員が先輩や地域の人々に温かく見守られながら成長していく姿を描いた。地元の高校生によるこうした取り組みは全国的にも珍しく、部員たちは「現在は駅や列車の映像が中心ですが、今後は沿線の名所なども紹介していきたい」と意気込んでいる。
同校放送部は1年生5人、2年生6人の計11人で活動。5年前に茂田美珠穂さんが顧問になって以来、全国大会で多くの賞を獲得してきた。
今回の企画は、JR西日本和歌山支社総務企画課の三谷陽平さんが紀伊長田駅(紀の川市深田)で作品を撮影する部員たちの姿を見たのがきっかけ。同線は乗客の減少に直面しており、田井ノ瀬~大和二見間22駅のうち終日駅員が不在の無人駅は15駅に上る。茂田顧問は1月に同支社の川井正前支社長の講演を聴いて以来、沿線活性化に意欲を持っており、JR側からの打診を快諾した。同顧問によると、「感じていた敷居を取り払ってくれるようで、うれしかった」という。
作品の内容は部員たちが自ら考案し、新人駅員・有田をOBの大学生、先輩駅員をJR社員、乗客を同部の中尾幸太部長(2年)と柴野遼さん(2年)が演じた。同顧問によると、同校の生徒のうち、和歌山線を通学に利用するのは約半数ほど。部員たちも撮影に臨むまでは「廃れている」「駅の場所も知らない」という状態だったという。
しかし、制作を進めるにつれて愛着が深まり、今では地域になくてはならない貴重な財産として考えられるようになった。取り組みをテレビで知った地元の人々から、感謝の気持ちを伝える手紙や電話が寄せられたという。
「初夏編」に続く「夏編」では紀の川を利用したカヌーの風景、「秋編」では粉河寺のたたずまい、「冬編」では最終列車を見送る駅員の姿を描く。
中尾部長は「最近、全国大会に出場するため東京へ行ったのですが、人も車両も多くせわしなく感じました。和歌山線は車窓から里山や田園風景を眺めているだけで癒やされます。珍しいデザインの車両も走っているのでぜひ乗ってほしい」と話し、茂田顧問は「高校生のうちから社会と接点を持てるのは貴重なこと。これからも地元の高校として地域に近づく努力を続けていきたい」と意気込みを語った。
部員の中には俳優や声優を志望している生徒もおり、互いに切磋琢磨しながら
技術の向上に努めている。