ベジフルフラワーの魅力 講師の土谷さん
ブロッコリーやパッションフルーツ、ナスやショウガ――。あふれるほどの野菜や果物をブーケやオブジェにした「ベジフルフラワー」。県内で唯一、それを手掛ける上級者「ベジフルフラワーアーティスト・プロフェッサー」の資格を持つのは、和歌山市西河岸町の土谷千鶴さん(55)。農作物が豊富な和歌山で、食べるだけでなく、目でも楽しめる野菜や果物の魅力を広めている。
日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。季節の野菜や果物を使い、その形やバランス、色合いを考えながら、竹串やつまようじを使って芸術的に配置していく。
資格取得のきっかは約8年前。息子が通う予備校の先生から「親も一緒に、何か挑戦してみては」とアドバイスを受けたこと。食べることが好きだった土谷さんは、まずジュニア野菜ソムリエ(初級)を取得。以来、探求心に火がつき次々と関係する資格を取得した。
食に関する依頼を受ける中で気付いたのは、子どもたちが野菜や果物の形をあまり知らないこと。形に興味を持ってもらえるベジフルフラワーに魅力を感じ、昨年、上級であるプロフェッサーに合格。ことし2月に初級養成講座の認定講師になった。
紀の川市の市制10周年記念式典で会場を彩り、和歌山電鐵貴志川線のイベントでは車内を華やかに演出。結婚式でのブーケ作りやテーブルコーディネート、カルチャー教室で講師を務め、出張レッスンにも出向く。
「これ、本物?」「野菜でこんなことできるの?」――。作品に出合った人は驚きと感動で目を丸くする。土谷さんの作品のコンセプトは「つまみたくなる」。観賞するだけでなく、全て食べられるのもベジフルフラワーの大きな魅力。見た目の興味から、展示後の作品を「食べてみたい」と口にし、野菜嫌いだったがトマトが食べられるようになった人もいる。また、ある商談会では、関係者が展示作品を食べてしまい、なくなるハプニングもあった。
野菜の栄養価やおいしい食べ方なども提案。カレーや鍋料理の材料をまとめ、持ち帰ってそのまま料理できるというユニークなブーケもあり、土谷さんは「おいしく食べてもらった方が、野菜も喜ぶと思うんです」とにっこり。
土谷さんは、野菜ソムリエ中級以上の資格者で、実践的にその魅力を伝える活動をする人のみに与えられる「アクティブ野菜ソムリエ」にも認定されている。また日本茶アドバイザーや調味料マイスターをはじめ、カレーパンタジスタなど、約30もの資格を持つ。
心掛けているのは、できる限り和歌山の農作物を使うこと。そして、少し曲がったものなど規格外のものを積極的に使い、ベジフルフラワーに変身させる。「ちょっと個性があるだけで、味や鮮度に問題はありません。作品にすることで興味を持ち、食べてもらえる機会をつくるお手伝いができたら」と土谷さん。
胸にあるのは、県民の健康寿命を延ばしたいという強い思い。子どもたちの食生活の乱れを危惧し、栄養バランスの取れた食生活を送ってほしいという願いがあり、キッズ野菜ソムリエ養成講座の講師としても、子どもたちの食育活動に力を注いでいる。
夢は、農業科のある大学や高校の卒業式で、生徒たちが育てた野菜を使って一緒にオブジェを作り、記念に持ち帰ってもらうことという。
土谷さんは「目で見て魅了され、食べてもおいしい、五感をフル活用できるもの。流通に乗らないB級品でも、おいしいことを知ってもらうきっかけになれば。野菜や果物の魅力を、作品を通して発信していきたいですね」と話している。