缶サット甲子園3年連続準V 桐蔭科学部
高校生が自作した空き缶サイズの模擬人工衛星「缶サット」を打ち上げ、技術力や創造力を競う「缶サット甲子園2016」に県立桐蔭高校(和歌山市吹上、岸田正幸校長)科学部が出場し、準優勝と特別賞のベストマネジメント賞に輝いた。同高は優勝こそならなかったが、3年連続準優勝となり、全国トップクラスの実力で同大会をリードする存在となっている。
大会では、缶サットとそれを搭載するキャリアと呼ばれる機構を生徒が自作して打ち上げ、搭載したカメラでターゲットを撮影してデータを集める。定められた技能を競うのではなく、オリジナリティーのある缶サットを作り、クールさを競うのが特徴。
今大会は秋田県で8月17~19日に行われ、桐蔭から出場したのは2年生の有田駿介君(17)、加納大成君(17)、西本凛君(17)のチーム。加納君は「夏休み3年分を缶サットに打ち込んできたけれど、それでも準優勝なのかと思った」と結果には悔しさをにじませた。
昨年度は技術を高めるために週に1回基盤を作って実験。エアバッグの開発など大会直前まで研究を続けた結果、当日は缶サット1機のみで勝負することになった。その反省を生かし、ことしは予備機を準備した。
今回から充電式の電池を使用し、缶サットの性能はそのままに、電池代も削減することに成功。電源やセンサーを司る基盤部分はメンテナンスがしやすいように電源、マイクロコンピューター、センサーとそれぞれの部分を組み替え可能にした。着地に使うパラシュートも、実際に落として実験し、最も安定して落下する形状を追究した。
当日を考慮した入念な研究により、故障もなく打ち上げは成功した。
大会では各チームが掲げたテーマについてのプレゼンテーションも審査される。同高のテーマは「純アクセルを求める」。物理の授業で学んだ加速度と缶サットで観測される加速度は違うのではないか、という疑問から生まれた。
加速度センサーは重力加速度も検出していることに気付き、純粋な加速度のみを求めようと、3人は専門書を読み込むなどして考察を深めたが、講評では「理論的根拠が必ずしも明確でない」と指摘された。データ解析を担当した西本君は「解析については納得のいく説明が受けられたので、今後は説明を踏まえてどうしていくか考えたい」と話した。
顧問の藤木郁久教諭は「ミッションはやり切れたが、彼らの取り組みを評価してもらえなかったのは心残り。しかし、授業だけでは学べないことができて、一つのことに打ち込めたのは素晴らしいこと」と語った。
チームの3人は、大会に向けて共に頑張ってきた1年生に悲願の優勝を託す。