30周年リサイタルへ 箏曲家・西陽子さん
和歌山市出身で、国内外で活躍する箏曲家・西陽子さん(52)のリサイタル「夢を織る手」が10月1日、東京都中央区の浜離宮朝日ホールで開かれる。演奏活動30周年を記念。西さんの母校・桐蔭高校箏曲部の卒業生も共演する。東京在住ながら市内に教室を持ち、母校でも講師として指導に当たるなど、今もふるさととのつながりを大切に活動する西さんは「30周年を、大好きな人たちと演奏できることに幸せを感じています」と笑顔で話している。
西さんは「今回は私の道標となったものや、新たな世界へ踏み出すきっかけをくれた曲を選びました。お箏はこんなこともできるんだと伝えたくて、『お箏でできることは全部やろう』と試みています」と話す。
東京芸大卒業時の学内演奏会で弾いた「手事」をはじめ、恩師の故・沢井忠夫さんの代表作「鳥のように」など、思い入れの深い曲ばかり。また、西さん作曲の新作「夏の庭」を初演する。
箏曲部卒業生は、西さんが指導する和歌山の教室生ら十数人と共に、箏群として出演。出演するのは奈良女子大学1回生の瀬戸千裕さん(18)、同大2回生の久保星(ひかり)さん(19)、関西大学1回生の小濱真琴さん(19)、広島大学2回生の戸津井亜生(あき)さん。
曲目は3年前、熊野那智大社でも同部が西さんと演奏した「箏コンチェルトの為の久遠の大地」(江戸信吾作曲)。「ブラジルと日本の懸け橋に」との思いが込められ、ブラジルでもワークショップを開くなど、箏で友情を深めてきた西さんにとっても特別な曲。雄大で躍動感あるリズムが特徴。その正確さが問われ、節によって大胆さや繊細さなど、多彩な表現が盛り込まれた難曲という。
当日に向け、今は県外で生活する卒業生が同校に集まって練習。小濱さんは「前回の演奏はテスト期間と重なって練習があまりできず、自分の中では完成度が低いと感じていただけに、じっくりと向き合いたい」、瀬戸さんは「大好きな曲。もう一度弾けるなんてうれしい」と喜び、戸津井さんは「卒業してもつながりが持てるのは桐蔭箏曲部ならでは。ありがたいです」。
今回、メンバーで唯一前回とは違うパートに挑戦する久保さんは「先輩方のかっこいい演奏にあこがれて箏を始めたので、私もそんな感動を皆さんに伝えられたら」と意気込んでいる。
学生との共演は、同部で約30年にわたり講師を務める西さんにも大きな刺激といい「今回はかないませんでしたが、現役生を含め『いつか東京で一緒に』という思いが、長い間胸にありました。いつも純粋で真っすぐお箏に向き合う皆さんに、私が感動をもらっています」と笑顔。
西さんは「お箏を演奏する人の数は減っています。海外に出ると、皆さんが素晴らしいと言ってくださるこの文化を、生きたかたちで残していきたい。若い人たちにも、どんどん伝えてほしいんです」と願っている。
尺八やギター、フルートの賛助出演もある。4000円(税込み)。チケットは、チケットぴあ、e+プラスなどで取り扱い。問い合わせは岩神六平事務所(℡046・876・0712)。