期待のゴルフツーリズム 県内誘致へ動き
日本を訪れる外国人観光客が順調に増加する中、海外のゴルフ愛好家に国内のゴルフ場でプレーしてもらう「インバウンドゴルフツーリズム」が効果的な観光振興策として注目されつつある。県も誘致に向けて、ゴルフ場関係者などを対象としたセミナーを開催している他、東南アジアを中心に開かれる国際的な商談会への参加を前向きに検討するなど、各方面への働き掛けに力を入れている。
ゴルフを目的に海外を訪れる観光客は富裕層が多く、誘致が成功すれば経済効果は大きいと期待されるが、マレーシアやタイなどの海外の先行地に加え、北海道や九州など国内の自治体もPRを強化しており、誘致競争には地域としての一体的な活動が求められる。
県は1月13日、田辺市の市生涯学習センターでゴルフツーリズムに関するセミナーを開催。約30人が参加し、野村総研上席研究員で北海道大学大学院客員教授を務める北村倫夫さんらが、誘致の事例や経済効果などについて講演した。
ゴルフツーリズムは、海外を訪れ、ゴルフを楽しみながら周辺の観光地を巡る形が基本。世界的に1990年代末から人気が高まっており、毎年約300万~600万人がゴルフを目的に海外を旅行しているとされ、その市場規模は2016年で約3500億円に上る。1997年には、国際組織「国際ゴルフツアーオペレーター協会」(IAGTO)も設立された。
アジアではタイやマレーシアが多くのゴルフ客を受け入れているが、日本の動きは鈍く、ゴルフを愛好する外国人の間で日本のゴルフ場はあまり知られていないのが現状。
国内のゴルフ人口が減少する中、ゴルフ場の利用客増を地域活性化につなげようと、北海道や沖縄、九州の各県は平成22年ごろから地域全体で誘致活動に乗り出し、各県単位で設立した協会を通じて、国際的な商談会への参加やコースの外国語対応などの充実を推進している。効果は現れており、ゴルフ人気が高いものの冬は寒さでプレーが難しい韓国から、多くのゴルフ客が九州を訪れているという。
一昨年には全国組織「日本ゴルフツーリズム推進協会」が設立され、和歌山県も昨年8月に加盟した。一部の先進的な県を除けば、早い動きといえる。
県内には22のゴルフ場があるが、平日は集客に苦労している施設が少なくない。県は観光交流課プロモーション班の職員6人が東アジアを中心に各自の担当国を年4回ほど訪問し、他の観光資源とともに県内のゴルフ場を現地の旅行会社などにPRしている。関西国際空港から近いことや、世界遺産の存在などを魅力に売り込む考えだが、交渉の席では「英語は通じるか」「キャディーは常に付くか」といった質問が多く出されるなど、受け入れ体制の整備が喫緊の課題となっている。