広域サイクルルート提案 経済同友会講演で

和歌山経済同友会(大桑堉嗣、樫畑直尚代表幹事)の平成29年度通常総会が23日、和歌山市友田町のホテルグランヴィア和歌山で開かれた。地域経済の発展に向け、事業計画案などを承認した他、堺商工会議所会頭で前田製菓㈱(堺市堺区)社長を務める前田寬司氏(65)が「広域連携によるサイクルツーリズムの振興」をテーマに記念講演し、約120人の出席者が熱心に学んだ。

総会では平成28年度の事業報告と収支決算報告、29年度の事業計画案、収支予算案が審議され、いずれも承認された。

大桑代表幹事はあいさつで、京奈和自動車道の県内全線開通や第二阪和国道の完成など県内の情勢にふれ、「インフラ推進には前進があったものの、人口減少には歯止めがかからない状況」と指摘。和歌山マリーナシティを候補地に県や和歌山市が推進している統合型リゾート施設(IR)の誘致計画にふれ、10月下旬に会員による海外のIR視察を計画していることを紹介し、「経済同友会は、会員が業種などの利害を超え、政策提言集団として責任ある活動を実践する団体でありたい」と力を込めた。

記念講演で前田氏は、自転車を取り巻く昨今の状況について「各地でサイクリングや自転車レースを観光資源として利用する動きが活発化している」と指摘。従来は「見る」ことを主体としていた観光が「体験・学習・交流する」ことを主体とする「ニューツーリズム」に変化していることを受け、「サイクルツーリズム」の振興を図る堺市の取り組みを、豊富な事例を挙げて解説した。

堺市は、自転車部品メーカー大手「シマノ」を擁していることから、自転車を地域資源と捉えてさまざまな取り組みを展開。散歩するように自転車を活用する「散走」の提言や、自転車通行環境の整備、自転車レースの開催などを積極的に行っている。

前田氏は、計画中の「泉州サイクルルート構想」を紹介し、「将来的には和歌山県や奈良県、淡路島などとの連携を視野に入れた広域ルートを設定したい」と期待を話した。

堺商工会議所の事業については、特色のある活動として、百舌鳥・古市古墳群の世界文化遺産登録を目指し、大阪府・市、住民、産業界が一体となって情報発信に取り組んでいる事例を示した。

また、自社の事業についても紹介。菓子の製造販売を手掛ける前田製菓の4代目である前田氏は、2代目に当たる祖父が「菓子屋は子どもに夢を売る仕事。水道の蛇口をひねると水が出るように、当たり前の世界で生きろ」と語っていたことから、同社のおなじみのフレーズ「あたり前田のクラッカー」が生まれたことなどを語った。

樫畑代表幹事は「高速道路の整備などで低調を強いられる旧街道沿いの商店の再興に、自転車イベントを方策としたい。きょうの講演が、堺市と和歌山がさらに仲良くなるきっかけになれば」と話していた。

講演する前田氏

講演する前田氏