旧県会議事堂が重文指定へ 夏目漱石も講演

 国の文化審議会(馬渕明子会長)は、岩出市根来の旧県会議事堂を重要文化財(建造物)に指定するよう文部科学大臣に答申した。同建物は現存する唯一の明治期木造和風意匠の県会議事堂で、歴史的価値が高いと評価された。これにより、県内の重要文化財(建造物)は82件(国宝を含む)となる。

 旧県会議事堂は明治31年、和歌山城北東の和歌山市一番丁に建設され、昭和13年に現県庁舎が完成するまでの約40年間、県会議事堂として使われた。木造2階建、瓦ぶき屋根、建築面積約1240平方㍍。

 16年に同市内の美園町に移され、37年には岩出市の根来寺境内に移築。「一乗閣」の名称で親しまれ、平成17年に県指定文化財になっている。同24年度から27年度にかけての保存整備事業により現在の場所に移築され、建築当初の姿に復元された。

 旧県会議事堂は本館、議場、控室の各部に分かれる。議場内部は広い吹き抜け空間で2階に傍聴席を張り出し、その下を土間廊下としている。正面には彫刻飾りの唐破風(からはふ)を設けた床の間が構えられている。議場は公会堂としても使われ、明治44年に夏目漱石が「現代日本の開化」と題して講演したことで知られる。

 外観や細部は伝統的な和風意匠としながら、洋式の小屋組で議場の大空間を実現するなど、地方大工の技術的深化を示すものとして価値が高いという。

 答申を受け、仁坂吉伸知事は「指定を契機に、本県の近現代史を象徴する本議事堂の文化遺産として歴史的価値が再認識され、県内のみならず、国内・海外の多くの方々に注目されることを期待します」と喜びのコメントを発表した。

 さらに23日の定例記者会見では、保存に向けた地域の協力、尽力に感謝の意を示し、今後の活用については「県議会や重要な会合の会場に使ったらいいと思う。重要文化財で行事を行うと値打ちが上がるのでは」と積極的な利用が進められることを期待していた。

旧県会議事堂の外観(写真は県教委提供)

旧県会議事堂の外観(写真は県教委提供)