『正忍記』から知る忍術 英研究家が講演

 忍術伝書『正忍記』から現代の生活術を考える「『正忍記』を読む会」(福田光男会長)のセミナー「紀州の侍・忍者を学ぼう~忍術伝書「正忍記」を中心として~」が2日、和歌山市手平の和歌山ビッグ愛で開かれ、同会のメンバーや県内在住の外国人など約60人が参加した。

 『正忍記』は紀州藩の軍学者・名取三十郎正澄が書いた忍術伝書。三大忍術秘伝書の一つで、時代劇の忍者像を形作ったとされている。

 今回は同書を英訳した日本兵法研究家のアントニー・クミンズさんが来日し、忍者のイメージと実態について語った。

 最初に福田会長が同書について紹介。忍者の服装や道具、集団で動く時のコミュニケーション力や諜報活動のための相手の心理を把握する方法など、現代にも生きる忍術が記されていると説明した。

 クミンズさんは一般的な忍者のイメージから説明。頭巾で顔を隠し、暗躍するのが必ずしも忍者ではないと忍者像を取り払った。

 そして西洋の忍者人気についても紹介。忍者をモチーフにしたさまざまな作品が出ているが、日本では忍者人気が知られておらず、忍者研究が始まったのは最近だという。

 忍者の認識の間違いも指摘。水上を渡る「水くも」の正しい使い方や、忍者も情報収集、盗人逮捕など仕事が多様なことなど、忍者のイメージを大きく広げた。また、説明しながら模造刀を手に立ち回って忍術も紹介。「忍者には役割も多い。手裏剣や頭巾のイメージを和歌山から変えていけたら」と話した。

 参加した女性は「忍者について知らないことばかりだったので、新たな興味の扉が開いた気がする。英語と日本語で楽しめて良かった」と話していた。

忍術を説明するクミンズさん

忍術を説明するクミンズさん