大空襲で犠牲の兵士を慰霊 野村さん向で
和歌山大空襲で犠牲になった一人の旧日本兵をしのぶ慰霊法要が10日、和歌山市向の歩道橋付近で行われた。
法要は同市北新の野村晴一さん(91)が実施。空襲があった昭和20年7月9日、野村さんは昭和天皇から授けられた軍旗を守る軍旗衛兵として、貴志小学校から近くの鉄道トンネルまで軍旗を運んでいた。
十数人が隊列を組んで軍旗を運んでいる途中、現在の歩道橋付近で1人の若い兵士に焼夷弾が直撃し、亡くなった。野村さんは遺体を見守る屍(しかばね)衛兵として未明まで付き添い、10日に近くの寺で兵士の部隊葬が行われた。
慰霊法要では、歩道橋と対面するように参列者の席が設けられ、同市吹上の無量光寺の月岡慶道住職が経を唱え、野村さんと地域の住民らが焼香した。
法要の後、野村さんは当時の部隊が士気を上げるために歌っていた部隊歌を歌った。
参列した向地区の明渡一真自治会長(74)は「自分は戦後にこちらに来たので、野村さんの話を聞くまで、地区の空襲については知らなかった。知っている人も減ってきているのではないか」、野村さんは「戦争の記憶を風化させないように、参列された方を通して広めていけたらいい。きょうの法要でやっと、衛兵の任務が終えられたように思う」と話していた。