車椅子で階段 マルトミレンタ「らく段」
キャタピラを階段の勾配に添わせ、電動で上り下りができる画期的な車椅子「らく段」を、建設機械などのレンタル・販売を手掛ける㈱マルトミレンタ(和歌山県和歌山市井戸、冨田博文社長)がことし5月に開発し、導入実績を伸ばしている。平地では車椅子として使用できる小型・軽量の可搬型階段昇降機で、介護現場の負担を大きく軽減し、エレベーターやリフト設置に比べて費用も安く、介護の大きな味方として普及が期待されている。
同社は昭和40年、冨田社長の父・耕平氏が同市紀三井寺でコンプレッサーや大型発電機、ブルドーザーの修理販売からスタート。その後、同市井戸に移転し、建設機械のレンタルを始めた。
平成12年に博文氏が社長に就任し、13年にエコ事業部を立ち上げ、23年に車椅子移動車両(福祉車両)のレンタルを開始。28年に合同会社介護タクシー・アド(大阪府)と業務提携し、エコ事業部は福祉介護事業部「マルトミケアハート」として新たにスタートした。
「らく段」は同社と共同で開発し、ことし2月に特許を取得している。父の代から建機を扱ってきた業務の背景から、キャタピラで階段を昇降する車椅子のアイデアが生れた。
「らく段」の基本操作は、手元のボタンで上がる・下がるを選び、キャタピラを階段の勾配に添わせて昇降する。
本体は29㌔と軽量で、折り畳み方式の小型に設計されており、持ち運びや収納が簡単。福祉車両や乗用車のトランクに搭載できるため、介護を必要とする人の行動範囲が広がることが期待できる。
バッテリーは家庭用コンセントで充電でき、最長約5時間使用可能。階段昇降時は安全のため2人で操作する。本体価格は70万2000円(税込み)。操作方法は同社ホームページの動画で紹介されている。介護事業所を対象に、厚生労働省の職場定着支援助成金・介護福祉機器助成コースの助成制度が利用できる。
「防災の日」の今月1日、医療法人裕紫会中谷病院(同市鳴神、中谷剛理事長)は「らく段」3台を導入した。
同院の小林春子看護部長は「災害などの有事の際、停電などでエレベーターが使えない場合の他、在宅支援などに活用したい。現在は、在宅支援で患者の家を訪れる際、階段があると3人がかりで介助しているが、これはとても便利」。市川寛事務次長は「以前エレベーターが止まった時、冨田代表がらく段を持って来てくれた。実際に使って効果を実感したのが導入の決め手だった」と話している。
谷眞子(ゆきこ)看護部顧問は「災害の話を聞くにつけ、体の不自由な入院患者は不安を覚えているが、らく段が備えられているということで、患者も家族も安心できる」と期待している。
「らく段」についての問い合わせはマルトミケアハート(℡073・479・1321)。