家康紀行(35)広く発信「天守台発掘調査」
前号では紀州藩主・浅野氏が献上したといわれ、現在も駿府城公園に残る静岡県の天然記念物「家康手植のミカン」の歴史と、400年の歴史を経て受け継がれる姿を取り上げた。
今週は同公園内で行われている「駿府城跡天守台発掘調査」を紹介したい。
駿府城は天正13年(1585)7月、家康により築城を開始。同16年(1588)初代の天守が完成するも、同18年(1590)家康は豊臣秀吉の命により関東に移封。慶長8年(1603)征夷大将軍就任、同10年(1605)に将軍職を息子の秀忠に譲り、同12年(1607)大御所として再び駿府城に居城を移した際、全国の大名に負担を命じる天下普請による大改修が行われている。
調査は静岡市により行われ、天守台石垣の残存状況の確認や学術的なデータ収集を基に天守台の整備方針を決めようと、平成28年8月から平成32年2月まで約4年にわたり、駿府城公園の北西部で実施されている。
一般的に発掘調査といえば一画が立入禁止となり、専門家が黙々と作業を行う姿を遠目に見るイメージであるが、ここでは調査現場を常時見学できる「見学ゾーン」を設け、調査の意図や子どもにも理解しやすくしたクイズ形式の駿府城の解説などを展示する「発掘情報館」の開設など、広く開放されていることが特徴。
とりわけ、直近の調査内容や出土品の展示などリアルタイムに情報発信が行われている点は、歴史ファンはもちろん、一般観光客の知的好奇心をくすぐるものがある。
また、今月いっぱいの期間限定で一般観光客向けの発掘体験(予約定員制)が催され、瓦に刻まれた文字や模様を写し取る拓本取りもできるという。
地域の歴史的価値の発掘に、市民やファンとの一体感がある調査事業。調査を通した新たな発見に期待したい。 (次田尚弘/静岡市)