観光プロモかけたい ブラジル訪問で知事

県民のブラジル移住開始からことしで100周年となるのを記念し、仁坂吉伸知事や県議らで構成する訪問団が約1週間、同国とアルゼンチンを訪れ、県出身で現地に渡った移民1世やその子孫らと交流を深めた。仁坂知事は帰国後、両国での観光プロモーションの実施に強い意欲を示した。

訪問団は仁坂知事の他、県議8人、県内国際交流団体の関係者ら計34人。知事就任後、ブラジル訪問は3回目で、アルゼンチンを訪れたのは初めて。県内からは明治時代の末期から戦後にかけて約6000人がブラジルに渡ったとされる。

一行は関西国際空港から出国し、サンパウロ(ブラジル)の州議会議事堂で行われた「和歌山県人ブラジル移住100周年記念式典」に出席。式典には同国全土から県出身者とその親族ら約480人が参加し、仁坂知事が80歳以上の出席者96人に長寿者表彰を行った。県によると、州議会議事堂で県人会の式典が行われるのは珍しく、県出身の父を持つ羽藤ジョオジ同州議会副議長の尽力が大きかったという。サンパウロでは市内の公園にある日本移民開拓戦没者慰霊碑に参拝した。

翌日は多くの日本人移民が上陸した港湾都市のサントスを訪問。同地の日本人会は漁業で成功した県出身の中井繁次郎さん(故人)が初代会長を務めたことから、一行は日本人会館や日本移民のブラジル上陸記念碑などを見学し、県人会の谷口ジョゼ眞一郎会長から第二次世界大戦の影響により内陸部への移住や土地・建物の接収などを強いられた歴史などについて説明を受けた。

一行はアルゼンチンでも和歌山県人会の会員らと交流。ブエノスアイレスでは日本人学校を前身とし、日本・スペイン・英の3カ国語習得に力を入れている私立学校「ブエノスアイレス日亜学院」を訪問。県人会の副幹事を務める日系2世の三井デリア教育学院長の案内を受けた。仁坂知事は多言語活用人材の育成が進んでいることを高く評価し、「すごく感動した。これが世界の流れかもしれない」と述べた。

帰国後の定例記者会見で仁坂知事は、日本の駐アルゼンチン大使から同国で日本への旅行が人気となっていることを聞いたと明かし、「ブラジルも同じような状況だと思う。人口が多く、富裕層もいる。今まで手薄だったが今後は観光プロモーションをかけないと」と述べた。

100周年記念式典であいさつする仁坂知事(県提供)

100周年記念式典であいさつする仁坂知事(県提供)