「想定外の事態は起こる」紀の川市で防災研修

 和歌山県紀の川市職員を対象にした防災研修が2日、同市西大井の市役所で行われ、2011年に釜石市(岩手県)の防災課長として東日本大震災を経験した佐々木守さんが講演し、職員約450人が聴き入った。

 釜石市は同県の沿岸部に位置し、震災では震度6弱の揺れを観測。888人が亡くなり、市内にあった住家の約29%に当たる4704戸が被災した。

 佐々木さんは震災が発生した瞬間を「市役所の天井が落ちてくるのではないかと思ったほど、すごい揺れだった」と振り返った。多くの人の命が失われる原因となった津波について、ハザードマップでは安全とされていた地域で避難の開始が遅れ、多くの人が亡くなったことを話し「ハザードマップはあくまで目安。行政もハザードマップを作っただけで安心してはならない」と強調した。

 同市は明治から昭和にかけて2度の大津波に見舞われた経験から防災に力を入れてきたが、佐々木さんは「大人たちの間に過去の高さを超える津波は来ないだろうという先入観があった」と指摘。自治体が災害に備えて作成している地域防災計画について、「災害時は想定外の事態が次々と起こる。(計画が)役に立たないことも覚悟しておくべきだ」と話した。

 東日本大震災の教訓として、姉妹都市や災害時応援協定を締結している自治体からの支援が大きな力になったことも紹介。「普段から広域でつながりを作っておくことが大切」と話し、大都市が検討している帰宅困難者対策について「災害時に全員が家に帰れるのは難しい。まずは死者を出さない対策に力を入れるべきではないか」と提言した。

 講演を聴いた市水道総務課の女性職員(44)は「災害時は想定外のことが次々に起こることを痛感し、とても参考になりました」と話していた。

講演する佐々木さん

講演する佐々木さん