食品廃棄物を家畜飼料に エコマネジメント
産業廃棄物処理業のエコマネジメント㈱(和歌山県和歌山市新留丁)が、食品の製造過程で出る食品副産物や余剰品をリサイクルし、家畜飼料「エコフィード」を製造する取り組みに力を入れている。国内では、飼料の7割を価格変動の大きい輸入に頼らざるを得ない状況の中、処分される食品を活用した良質で安価な「国産飼料」への期待は高まっている。同社はエコフィードで育つ和牛の飼育にも事業を広げており、阪口宗平社長は「いずれは肉の製造まで一貫して手掛け、『食の循環』を和歌山でつくっていけたら」と構想を抱いている。
紀の川市桃山町にある「エコの里桃山工場」。おからやミカンの皮、ウメの種などが入った大袋がずらりと置かれていた。同社では年間1万2000㌧の食品廃棄物を受け入れており、うち2割を飼料化。引き取った食品はここで発酵、破砕、攪拌(かくはん)処理が行われる。
「水分の多い食品は腐りやすく、飼料として利用するには加工や処理が必要なんです」と兼田憲治所長。
例えばおからだと、乳酸菌を混ぜてフレキシブルコンテナバッグに入れ、密閉状態にした上で一定期間、発酵させる。「サイレージ」と呼ばれる技術で、熱処理などのエネルギーを使わない「環境に優しい」技術だ。さらに天日干しで乾燥させる。兼田所長は「コストをかけてはエコフィードの意味がない。牛の口に入るものなので、『食の安全』や衛生面には特にこだわっている」と話す。
産業廃棄物の収集や運搬を手掛ける傍ら、増え続ける廃棄物の減量化や再資源に取り組んでいる同社。2012年ごろから畜産協会わかやまの協力も得てエコフィード事業に本格的に乗り出した。現在、県の繁殖牛農家の半数でエコフィードが使われているといい、ウメの消臭効果で「牛舎の臭いが軽減した」といった声も寄せられている。
17年には御坊市内に自社牧場を構え、エコフィードを使った牛の実証飼育も始めた。科学的な分析に基づく栄養素を配合したエコフィード飼料を使い、16頭の牛を育てている。飼料コストを削減したい県も注目。消費者の健康志向が高まる中、赤身の多いヘルシー牛を育てたいと、6頭の熊野牛を同社に試験委託している。
全ての食品廃棄物をエコフィードにするのは現状では難しく、リサイクルできなかった分は土として活用することも検討中。コスト面でも解決すべき課題は残っているが、「ノウハウを積み重ね、地元畜産業界に貢献したい」と阪口社長。挑戦は始まったばかりだ。
国内では年間650万㌧の食品が廃棄処分されているという。阪口社長は「多くの人に取り組みを知ってもらい、ごみの減量化への意識を高めたい。大きな利益は望めないが、これからもエコフィードの事業は続けていく」と話している。