和歌山の伝説とフラメンコの融合 初公演

 和歌山フラメンコ協会(森久美子会長)による新しい舞台芸術「伝説ふらめんこ舞(まい)舞台」の第一弾「ねごろ伝説~住蛇(じゅうじゃ)が池~」が4月29日、和歌山県岩出市根来の重要文化財「旧県会議事堂(一乗閣)」で上演され、450人がフラメンコと能面の舞、筑前琵琶が織りなす幽玄の世界に浸った。

 スペイン大使館や県、わかやま新報など後援。文化の力で和歌山の魅力を再発見しようと、同協会は昨年から地元の伝説をフラメンコで表現する舞台を企画。和の文化とフラメンコが融合した新しい舞台芸術をつくり上げた。森さんは「和歌山各地に眠るさまざまな物語にスポットを当て、その地域の人たちとの交流を図り、微力ながら地域活性化の一助になれば」と話す。

 「ねごろ伝説」は、岩出市根来の住持池(住蛇が池)を舞台に、小野小町に恋慕した深草少将の「百夜(ももよ)通い」を題材にした物語。能面を着けたフラメンコダンサーと、筑前琵琶・篠笛・太鼓などの和楽器を取り入れた「和のフラメンコ」の舞台となっている。

 小町役は森さんが演じ、能とフラメンコ、静と動の相反する二つの伝統が融合した「フラメンコ能面舞」をドラマチックに踊って喝采を浴びていた。深草少将役はスペイン人舞踊家のパブロ・セルバンテスさんが演じ、小町を恋い慕う少将の情念を情熱的な踊りで表現して会場を魅了した。

 物語の進行役は神戸市の筑前琵琶奏者、川村旭芳さんが務め、抑揚ある弾き語りで聴衆を幽玄の世界に導いた。この他、森久美子フラメンコ舞踊団、「根来の子守唄」を独唱した佐藤恭子さん、篠笛演奏の上中由貴さん、太鼓演奏のHICARICHIさんらが出演した。

 紀の川市から訪れた長尾智子さんは「歴史ある一乗閣の建物とフラメンコがよくマッチし、琵琶の弾き語りも良かったです」、和歌山市の木村裕美子さんは「初めてフラメンコを鑑賞しましたが、情熱的で巧みなステップに驚きました」と話していた。

能面を着けフラメンコで小野小町を演じる森さん

能面を着けフラメンコで小野小町を演じる森さん