県内最大の反射鏡再メッキへ きみの天文台

みさと天文台(和歌山県紀美野町松ケ峯、山内千里台長)は、同施設に備えている大型望遠鏡の主鏡と副鏡のアルミメッキ塗り替えのため9日、クレーン車を使ってドームから取り出す、大掛かりな作業を行った。鏡は専門業者の施工で新品同様に生まれ変わり、6月末日には再び装着される予定で、7月31日の火星大接近は、リニューアルされた反射鏡で楽しめる。同作業を行うのは1995年の創設以来初めて。

主鏡は「苗村(なむら)鏡T.N.M846」という名称で、直径約105㌢、約200㌔。滋賀県在住で黄綬褒章と「現代の名工」を受賞した苗村敬夫さん(80)が制作し、これまでに手掛けた超高精度鏡約2000枚のうち2番目に大きい。通常の望遠鏡の5倍以上の、10万分の1という日本一の精度に仕上げられている。

主鏡は20年以上にわたり空気にさらされたことで表面の劣化が進み、数カ所に傷のような部分が見られた。山内台長(44)によると反射率が落ち、暗い星が見えづらくなっていたという。

二つの鏡の修復をする、薄膜加工の専門業者ジオマテック(宮城県)は、薬品で古いアルミを溶かして除去した上に新たなアルミを蒸着させ、酸化シリコンで保護膜を施して仕上げる。

ドーム内では、㈱西村製作所(京都府)の職員4人が主鏡の取り出し作業を慎重に行った。クレーン車のオペレーターに細かい指示を出しながらフックでつり下げて木箱に収め、さらにドームのスリットから外へ。トラックに積み込まれた鏡は数日後、宮城県に搬送されるという。

山内台長は今後について「『夜の観望会』の来場者を1万2000人に伸ばし、町の発展に益々貢献したい」と力を込めていた。

同製作所で製造管理次長を務める森山雅信さん(51)は、「解体作業が難しかったが、順調に終えることができた」、クレーンのオペレーターを務めた㈱湊組(和歌山市、笹本昌克社長)の石原義道さん(43)は、「風がなかったので作業環境は良かった。細かい作業なので慎重に行った」と話していた。

主鏡をクレーンでつって木箱へ収める作業員

主鏡をクレーンでつって木箱へ収める作業員