防災遠足を提案 田中消防士長が全国入賞

 消防職員が職務を通じての体験や業務に対する提言、取り組むべき課題などを発表する「第41回全国消防職員意見発表会」(全国消防長会主催)が1日、東京ビッグサイトで開かれ、初出場した和歌山県の和歌山市消防局中消防署消防士長の田中宏幸さん(30)が、全国で7人の入賞に選ばれた。

 田中さんは昨年10月に行われた県大会、ことし4月に京都で開かれた東近畿支部大会を勝ち抜き、全国9支部から10人のみが参加できる全国大会に進んだ。市消防局からの全国出場は初めてのことだった。

 田中さんの発表テーマは「和歌山の新常識」。幼い息子が小学生になって学校にいる時に災害が起こった場合、正しい避難行動ができるだろうかと考えた。小学校や保護者に避難訓練について話を聞いたり、マニュアルを読んだりして学校の防災対策について調べ、東日本大震災の「釜石の奇跡」のように、幼少期から命を守る防災知識を身に付けてもらうために「防災遠足」を提案した。

 内容は、非常持ち出し袋をリュックサックにして背負い、遠足の道中は危険箇所を見つけながら徒歩で移動し、昼食には簡単に調理できる非常食を体験するというもの。防災遠足を通して避難行動を学び、災害時に率先して活動できる小学生がいる「和歌山の新常識」をつくることを訴えた。

 市役所市長室で尾花正啓市長への入賞報告会があり、田中さんは受賞したプレゼンテーションを改めて披露。朗読教室で練習した言葉の強弱の付け方や発音を生かし、力強く新たな防災の取り組みを市長に提案した。

 現在、防災遠足の実施は市教育委員会と検討中。田中さんは「学校への呼び掛けや署内見学などで広報し、実現できるように取り組みたい。今回の発表で終わらず、継続していくことが大事と思っている」と話した。尾花市長は「小学校でも訓練の取り組みはいろいろ。子どもたちが逃げる意識を持つことが必要なので、教育委員会と連携して、新常識をつくれるようになればいい」と実現に向けてエールを送った。

尾花市長に入賞を報告した田中さん(左から2人目)

尾花市長に入賞を報告した田中さん(左から2人目)