寄り添うガン緩和ケア病棟 日赤に10月開設

日赤和歌山医療センター(和歌山県和歌山市小松原通)は10月1日、がん患者の心身の苦痛を和らげる「緩和ケア」の専門病棟「ひなげし」を開設する。緩和ケアの治療が受けられる入院施設としては県内では4カ所目。17日には医療関係者らを対象にした内覧会があった。病院と家庭の中間的な施設として、医療よりも生活を重視し、「その人らしさ」を大切に過ごせる病棟を目指す。

がんはあらゆる病気の中で最も死亡率が高く、国民の2人に1人が罹患、3人に1人は亡くなるといわれる現代の国民病。同センターでは、体や心の苦痛を和らげ、豊かな人生を送ることができるよう支える緩和ケアのニーズの高まりを受け、がん医療強化の一環として開設。「思いやり」「いたわり」の花言葉を持つ「ひなげし」を愛称に選んだ。

既存病棟を改築し、南館13階に設けた。1386平方㍍。全室個室で20床、うち4床が有料の特別室。トイレは広めの空間で、背もたれや手すりを設置。車いすで出入りしやすい折り戸式にするなど配慮されている。

特別室は和室、シャワー室、キッチンを備え、付き添いの家族らも一緒にゆったりと過ごせる。白が一般的な病院の室内で、ベージュや木目調の茶色を壁面や床に採用し、温かい空間になっている。

また、高層階からの眺望を生かしたデイルームには簡単な調理ができるキッチンスペースを設け、家庭のリビングでくつろぐかのように過ごせる。色とりどりの花々で彩る専用の屋上庭園も備えた。

同センターではこれまで、がん患者に対しては医師や看護師らでつくる緩和ケアチームでサポート。治療と併せて緩和ケアを行う体制をとってきたが、基盤ができ、病棟が確保できたことから9月1日、緩和ケア内科部を新設。専門病棟の開設に向けて準備を進めてきた。

同部には5人の医師を配置。特に身体的な苦痛の緩和を目的とし、手術や抗がん剤投与、延命処置は行わない。症状が緩和されれば患者本人や家族の要望を聞いた上で、地域の医療機関と連携しながら、住み慣れた地域や自宅療養への移行を支援する。

緩和ケア内科部の筒井一成部長(64)は「これまでは根治を目指す治療ができなかった場合、他の施設を勧めるなどの対応しかできなかったが、選択肢が増えた。総合病院として各診療科と連携を図りながら、『いい医師、看護師に出会えた』と感じてもらえるよう、患者さんや家族に寄り添った質の高い医療を提供していきたい」と話している。

まずは同センターでがん治療を受けている患者から希望者を受け入れ、順次一般患者を受け付ける。

19日、一般向けの内覧会を開く。午後1時半から3時半まで。問い合わせは同センター総務課(℡073・422・4171=代表)。

家族とゆったり過ごせる特別室

家族とゆったり過ごせる特別室