思い出いっぱい144年 冷水分校お別れ会

 3月で廃校となった和歌山県海南市の旧内海小学校冷水分校の「お別れ会」が20日、開校の地である了賢寺(冷水)で開かれた。歴代の校長や卒業生ら約120人が参加し、分校での懐かしい記憶に思いをはせ、長年にわたり児童の成長を見守ってきた学びやとの別れを惜しんだ。

 同分校は1874年4月、了賢寺の廊下を使って「冷水簡易小学校」として開校。93年、近隣の冷水・名高・藤白の3校を合併した内海尋常小学校の開校に際し、冷水分教場とされた後、1964年に旧内海小学校冷水分校として現在地(冷水494)に校舎が建設された。ピーク時には約100人が学んだが、少子化により児童数は減少の一途をたどり、2012年3月に休校。ことし3月31日、144年の歴史に幕を下ろした。

 お別れ会で神出政巳市長は「教育分野の将来像を『心やさしい人が育ち、ふれあいがあるまち』と定めている。分校の歴史や伝統は心の中に生き続け、次代に受け継がれると信じて取り組みを進める」と話した。

 冷水地区自治会の中野文夫会長(73)は「35年ほど前、社会の授業で教壇に立ち、会社の話をした」と、自身の体験を交えて地域とのふれあいを重視してきた分校の取り組みを紹介し、その歩みを懐かしんだ。

 卒業生を代表してあいさつした土井貴宏さん(19)は「給食は本校から自動車で運ばれ、おかずが入った重い容器を約50段の階段を上って校舎まで運んだことが一番の思い出です」、東方凜さん(20)は「テレビの人気番組に出演したこともあり、温かい交流の思い出が多くある冷水を、誇りに思います」と目頭を熱くしていた。

 お別れ会終了後、出席者は校舎前と了賢寺前の2カ所で記念撮影をした。

 校舎は本年度中に撤去され、跡地は多目的広場として活用される予定。

校舎の前で記念撮影した参加者ら

校舎の前で記念撮影した参加者ら