記憶「風化させない」 福知山脱線事故慰霊祭

 2005年にJR福知山線で快速列車が脱線し、乗客と運転士107人が亡くなった事故から25日で14年となるのを前に、JR西日本労働組合和歌山地方本部(田中明夫執行委員長)は23日、和歌山県和歌山市の屋形町カトリック教会で慰霊祭を執り行った。

 乗客106人と運転士1人、関連死2人の計109人を慰霊し、事故の風化防止や安全意識の向上を図ろうと毎年開いており、今回が14回目。同本部の組合員やOBら約20人が参加した。

 参加者らは賛美歌を合唱し、聖書を朗読。脱線した列車が線路脇のマンションに激突した事故現場の写真や花などが置かれた祭壇に手を合わせて犠牲者に哀悼の祈りをささげ、「一人ひとりの命を大切に安全の意識を高め、二度とこのようなことが起こらないようにしなければいけない」と力を込めた。

 田中執行委員長は、亡くなった運転士(当時23歳)が車掌だった頃、仕事や私生活で交流があったという。「ラーメンやスポーツが好きで面白い後輩だった。新幹線の運転士になることを夢見ていた」と回顧。当時の社内について「安全分野の設備投資の少なさを社員の集中力で補おうとしていたように感じる」と振り返った。

 同社が現場に設置した慰霊施設「祈りの杜 福知山線列車事故現場」に対し、事故で家族を亡くした遺族の中から「(列車が激突した)マンションが見えず、事故の悲惨さが伝わらない」との声もあるとし「会社の体質が根本的に変わっていないのでは。事故の風化や隠蔽(いんぺい)を許してはならない」と話していた。

事故現場の写真を前に手を合わせる参加者

事故現場の写真を前に手を合わせる参加者