持続可能な加太 東京で食と地域の魅力発信

豊かな漁場を守りながら伝統的な漁法を続けている和歌山県和歌山市加太地区の海の幸を紹介するイベント「加太の海は、ずっとサステイナブル」が12月1日まで、東京駅直結の新丸ビル(東京都千代田区)7階のレストランフロア「丸の内ハウス」で開かれている。加太を訪れ、漁師らと交流したシェフたちがオリジナルメニューを提供し、食材の魅力とともに、国連のSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも注目される加太の伝統を発信している。

加太観光協会(稲野雅則会長)と丸の内ハウスが主催し、月刊誌『ディスカバー・ジャパン』が協力。日本各地の食文化、美味を紹介する丸の内ハウスの企画「ハウスジャーニー」の第4弾で、加太に研究室分室、地域ラボを置く東京大学生産技術研究所の川添善行准教授の紹介で実現した。

加太では、約130年にわたり続いているマダイの一本釣りをはじめ、蛸壺漁、刺し網など、魚と海中環境を傷つけにくく、豊かな漁場を守る伝統的な漁法が維持され、サステイナブル(持続可能)な海の恵みを受け継いでいる。

これまでのハウスジャーニーは県単位だったが、初めて一つの漁港に集中。丸の内ハウス9店舗のシェフたちは加太を訪れ、伝統漁法を見学し、漁師らと漁師鍋を囲むなどして交流した。加太が生き残っていくために、マダイのブランディングなど漁業の価値を高め、漁師も増やしていきたいことなど、加太の生産者の思いにふれた上でメニューを考えた。

「加太産天然鯛の小鍋」「紀州加太天然〆生ダコのプッタネスカ」「釜揚げヒジキそば」「加太の真鯛尽くしのリゾット」「ところてんフルーツカクテル」など和洋さまざまな調理法で、メインディッシュから軽食、おつまみまで多彩な期間限定メニューが提供されている。

期間中には加太の漁師たちが上京し、新鮮なタイやハマチの刺し身を来店者の目の前でさばき、ワカメやトコロテンなどを販売するイベントも行っている。

ビジネスの中心地にある丸の内ハウスは、連日約2500人、金曜には約3000人が利用し、東京のオフィスワーカーにとってライフスタイルの身近にある存在。同所統括マネージャーの玉田泉さんは「加太をはじめ地方には素晴らしいものがある。東京駅前のこのスペースでその魅力を正しく伝えたい」と話す。

食材のPRにとどまらず、加太の漁業の持続的な発展や地域おこしへの効果が期待される今回の取り組み。稲野会長(46)は「文化的、伝統的な取り組みを続けている加太の漁業に、丸の内ハウスの皆さんが感動し、漁師たちの思いもくんでくれている。加太のサステイナブルをさらに発信していけたら」と話し、都民だけでなく、出張などで東京を訪れる県民にも立ち寄ってもらいたいと期待している。

メニューなどの詳細は丸の内ハウスのホームページ(http://www.marunouchi-house.com/)。

会場を訪れた加太の漁師たち(丸の内ハウス提供)

会場を訪れた加太の漁師たち(丸の内ハウス提供)