静脈血栓の融解など 県立医科大学で研究発表
和歌山県立医科大学は和歌山市紀三井寺の同大生涯研修センターで記者会見を開き、同大医学部法医学講座の近藤稔和教授が共同研究により、タンパク質のインターロイキン6に静脈血栓の融解を促進させる作用があることを明らかにしたと発表。また、同大情報基盤センターの山本景一准教授が健康観察PHRアプリの開発について発表した。
近藤教授は肺動脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を取り上げ、心臓から肺に血液を送る肺動脈に血栓が詰まる病気で、突然死に至るケースが多いと説明。タンパク質の一つであるインターロイキン6に注目し、マウスを使用して実験を行った。
実験したところ、インターロイキン6の遺伝子が欠損したマウスは野生型のマウスに比べて静脈血栓が大きくなった。近藤教授はこの結果について、インターロイキン6の遺伝子が欠損したマウスでは線溶系の物質の発現量が少ないため血栓が溶けにくく結果的に血栓が大きくなると説明。インターロイキン6の投与は静脈血栓の融解を促進させるとし、「今後の治療薬の開発につながる可能性がある」と期待を寄せた。
山本准教授は医療や介護、健康などのデータを本人の判断のもとで利活用する「パーソナルヘルスレコード(PHR)」に対する注目度が上昇していることを説明。歩数や血圧、摂取カロリーに加え、発熱や咳などの症状が出てから症状がなくなるまでの経過観察も記録することができるPHRアプリを京都大学の研究者と共同で開発したと発表し、「アプリだけで簡単にデータを管理することができる」と話した。