思い出をありがとう みさき公園が閉園

地域を中心に、多くの人に親しまれた総合レジャー施設「みさき公園」(大阪府岬町、真貝征志郎園長)が3月31日、63年の歴史に幕を下ろした。1957年に開園し、大阪、和歌山のファミリー層を中心に人気を集めたが、近年の来場者数減少に伴い、運営会社の南海電鉄が2019年3月に事業撤退を発表していた。営業最終日となったこの日は6214人が来場し閉園を惜しんだ。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、同園は2月末から休園。当初3月19日からの営業再開を予定していたが、政府からのイベント自粛延長の要請を受け、24日に営業を再開した。しかし、大阪府の外出自粛要請を受けて、最後の週末となる28、29の両日は再び休園。そのまま閉園も検討されたが、来園者の体温計測や手のアルコール消毒など、感染防止策を徹底するかたちで、残された最後の2日間の営業再開となった。

和歌山市から1歳と6歳の子どもと訪れた30代の主婦は「いつか自分に子どもができたら連れてきたいと思っていたので、寂しい気持ちはあるけれど、きょう子どもたちと思い出がつくれて良かったです」と、フラミンゴを見ながら笑顔で話した。

人気のイルカショーは、人が密集しないように事前抽選を実施。観覧者を定員の5分の1程度としたため、スタジアムの外や、園外の堤防からも多くのファンが最後のショーを見守った。ショーの進行役のスタッフは、会場外にも声を掛け、一体感に包まれる中、その場にいる全員で最後の時間を過ごしていた。長女が同園の元スタッフという和歌山市の北野和子さん(60)は、「小学生の頃からイルカのトレーナーになりたいと言っていた娘が夢をかなえた大切な場所。たくさんの思い出があり、最後と思うと寂しい。イルカたちやこれまでお世話になった方々に感謝しています」と涙を流した。

営業終了時刻の午後5時、園内に「蛍の光」が流れ、別れを惜しむ来園者らがゲート付近に集まった。新型コロナウイルス感染拡大の懸念から、予定されていたスタッフ全員でのあいさつを中止し、真貝園長が代表して「63年間ありがとうございました」と深く頭を下げた。来園者からは「楽しい思い出をありがとう」、「家族の笑顔をありがとう」と大きな拍手が送られた。

閉園後、真貝園長は「今は『終わったな』というのが率直な感想です。63年という長い歴史の中、ずっと営業し続けてこられたことを誇りに思いたい。これまで来園していただいた全ての皆さまに感謝を申し上げたい」と語った。

跡地は岬町が無償で譲り受け、一部を残して自然公園として整備する方針で、民間事業者を公募する。約450頭の動物は、アドベンチャーワールド(白浜町)などが引き取る方向で、現在全国の園館と協議しているという。フンボルトペンギン6羽、タンチョウヅル2羽などは和歌山城公園動物園での受け入れが決まっている。

来場者にあいさつをする真貝園長

来場者にあいさつをする真貝園長