田村政喜氏が着任 和歌山地方・家庭裁判所

和歌山地方・家庭裁判所の新所長に4月26日付で就任した田村政喜氏(57)が5日、和歌山県和歌山市二番丁の同地裁で記者会見し、「所長の役割は黒子のようなもの。裁判官をはじめ裁判に携わる一人ひとりが力を発揮し、より良い裁判を実現するための環境を整備していきたい」と抱負を語った。

田村氏は宮城県出身。東京大学法学部を卒業後、1989年に裁判官となった。東京地裁や大阪地裁などで主に刑事裁判を担当した他、最高裁や外務省でも勤務した経験がある。前任地は横浜地裁。県内での勤務は初めて。

会見では法曹を志した動機について「法律を使うことによって紛争を解決でき、人のお役に立てると思ったから」と説明。司法試験に合格し司法修習生として裁判官や検察官、弁護士の仕事を学ぶ中で年齢の異なる裁判官同士が積極的に意見を交換する姿に好印象を抱き、裁判官を志したことを話した。

新型コロナウイルスの感染拡大により各地の裁判所も業務に影響が生じた。田村氏は「(裁判などの)期日取り消しや延期もあったが徐々に業務を再開している。今後も傍聴席の席と席の間を空けたり換気をしたりして少しでも感染拡大防止に努めたい」と話した。

これまでに旅行で高野山や熊野古道を訪れたことがあるとし、「雄大な景観と神秘的な雰囲気に心が洗われる思いがした。熊野古道は流れている空気が神々しく別世界に入ったような感じがした」と振り返った。着任後の印象として「海も山もあり自然が美しいところ。ゆったりした時間が流れていて暮らしやすい。魚は絶品で種類も豊富」と語った。

導入から10年以上が経過した裁判員制度については、刑事裁判官としてさまざまな裁判員裁判に関わってきた経験から「多角的な観点から議論することで判断に厚みや深さが生まれる。非常に優れた制度で刑事裁判が改善されている」と高く評価。「裁判員の方は年齢や社会経験もさまざまで素朴な疑問をおっしゃってくださる。毎回教えていただくことが多く私の先生だと思っている」と話した。

新所長として抱負を語る田村氏

新所長として抱負を語る田村氏