留置所に食事届けて70年 海南市の神﨑さん
現在の警察法が施行された7月1日に、警察業務に協力した個人や団体に感謝状、表彰状を贈る警察施行記念の表彰が和歌山県内14署で行われる。海南署では、70年近く警察署の留置場に食事を配達している日方の仕出店「登利久(とりひさ)」店主の神﨑專行(こうざき・ひろゆき)さん(68)に感謝状を贈呈する。
神﨑さんは登利久の5代目。留置場への配達は父の栄一さんが始めたという。神﨑さんは県立海南高校の定時制に通い、昼間は栄一さんの仕事を手伝い、夕方から学校に通っており、当時から留置場への配達に一緒に行くこともあった。
その後も栄一さんと共に働き、栄一さんが2004年に亡くなった後、仕事を引き継いだ。長年、仕事をしている親の背中を見ていたので、自分は当然後を継ぐものだと思っていたという。
現在は夫婦2人で店を切り盛り。留置場には朝昼晩の一日3回配達している。朝は午前6時40分ごろに海南署から人数などの連絡があり、7時ごろに朝食を配達。それから正午ごろ、午後5時ごろに出来たての弁当を配達する。同署によると、正月や盆休み、土日を問わず毎日3回配達してもらわなければならないので、仕事を引き受けてくれる店舗はなかなか見つからず、各地で留置場の食事事情はさまざまだという。
献立は前日から考えるが、毎日配達するため、メニューが重ならないようにバリエーションを考えるのが大変とのこと。「留置場で食べたご飯がおいしかったので」と店を訪れる人や、県外の拘置所に移送される際に「次の場所でも食べられたらいいのに」と言いながら移送されていく人もいたという。
神﨑さんは「朝起きるのがつらいときもあるが、一日3回の配達はもう生活の一部。今後も変わりなく続けていければ」と話している。