根来の子守唄次世代へ 保存会が冊子を刊行
江戸時代の初めから主に紀の川流域で継承される「根来の子守唄」を普及・啓発しようと、「根来の子守唄保存会」(小倉しのぶ会長)はこのほど、子守唄を分かりやすい冊子にして刊行した。17日には関係者のみで和歌山県岩出市根来の旧県議会議事堂(一乗閣)で出版記念イベントを行う。
同保存会は1966年に発足。71年には開県100年記念事業として県民文化会館で民俗芸能大会に参加。87年から2016年まで全国の子守唄の発祥地7市町村で持ち回りで開催する「子守歌サミット&フェスタ」に毎年参加し、小中学校の子ども教室で唄と踊りを指導するなど、子守唄の継承と普及に努めている。現在の会員数は約30人。
冊子(A5判、20㌻)のタイトルは「根来の子守唄 今むかし」。7番まである歌詞とともに、地元に残る歴史や伝説など、その背景を紹介している。作製のきっかけとなったのは昨年4月の緊急事態宣言。継承・普及の機会が減少したことで会員は「何か今できることはないか」と考え、「自分たちの熱意を後世に残したい」と動き出した。
冊子の中の挿絵や文章、レイアウトは全て保存会の会員が協力して作製。子守唄は「ねんね根来のよう鳴る鐘はヨ一里聞こえて二里ひびくよバイバイ」で始まる。
臥竜松(がりゅうまつ)や住蛇池(じゅうじゃいけ)、覚(かく)ばん山など地域の風物や風景が盛り込まれた情緒豊かな歌詞が特徴。400年にわたって人々の思いを乗せて唄いつないでいる。
また、根来の里の民話でつづられた唯一の子守唄。江戸時代の初めごろから、紀の川筋から有田まで唄い継がれているという。
子守唄に登場する根来寺には歌碑がある。また「道の駅ねごろ歴史の丘」には音声装置が設けられ、古都清乃さんが歌う根来の子守唄を聞くことができる。
冊子の終わりには「この大切な伝統文化を後世に残し、未来に引き継ぐ若い継承者を育てるのが最も大切な役割。子どもたちが大人になり、赤ちゃんをあやすとき、自然と『根来の子守唄』を口ずさむ。そんな未来のために継承・普及に努めています」と締めくくっている。
主に校正などを担当した同会の前田博子さんは「地域に誇りを持って唄い継がれてきた。多くの人に興味を持ってもらえればうれしい」と話している。
冊子は岩出市立図書館や市内の小学校、保育園などに配布される予定。