改良薬で膠原病皮膚症状に効果 医大など

 県立医科大学皮膚科学教室の古川福実教授らが中心となって行った世界初の膠原病皮膚病変に対する抗マラリア薬の臨床試験が成功し、今月7日から販売が開始された。県立医大や東京大学医学部リウマチ内科などがチームを組み、国内では目の副作用と薬害事故などの問題から敬遠されていた治験に取り組んだ結果、全身症状と皮膚症状のみの患者にも有効性と安全性が認められた。

 膠原病は何らかの原因で自己免疫システムに異常をきたし、顔や手の皮膚のひどい炎症、関節の腫れや痛み、腎障害などの症状が出る難病の一種。これら皮膚疾患や関節痛など全身的な症状がみられるSLE(全身性エリテマトーデス)と、皮膚症状のみのCLE(皮膚エリテマトーデス)の患者に大きく分かれる。

 昭和9年、ドイツでヒドロキシクロロキン(HCQ)という薬が開発されて以降、世界中で標準的な治療薬として医療現場で使用されてきたが、34年にクロロキン網膜症という目に関する重い副作用が海外で報告され、日本でもこの症状の出た患者が1000人以上に及んだ。日本ではさらに厚生省(当時)が情報公開や製薬会社に対する指導などを怠ったことにより、被害が拡大する薬害事件に発展。49年に製造中止となった。

 海外では臨床使用に関する規制を強化するなどしながら、現在は70カ国以上でHCQが承認されている。しかし、製薬承認申請のための臨床試験は行われておらず、過去からの豊富な臨床使用に関する経験、公表された論文データなどに基づく申請が行われ、承認されている。こうした流れの中、改良されたHCQは世界の標準的治療薬として認められながら、日本では開発されないまま、ステロイドの過剰使用などで患者のQOL(生活の質)を下げる結果となっている現状という。

 県立医大の古川教授は、東大医学部アレルギーリウマチ学の山本一彦氏、多摩総合医療センターリウマチ膠原病科の横川直人氏らと日本ヒドロキシクロロキン研究会を立ち上げ、厚生労働省から開発要請を受け、皮膚科、リウマチ・内科、眼科が協力した世界初の承認申請臨床試験に着手。皮膚症状のCLEと診断された日本人患者(SLE合併患者含む)を対象とした治験の結果、有効性と安全性が認められる免疫調整剤「プラケニル」の開発に成功した。

 古川教授は「安全に十二分に配慮した使用で、患者の治療に大きな貢献ができるものと思われる。まさに、薬禍を乗り越えた臨床試験であり、協力いただいた患者さんに感謝と敬意を表したい」と話している。

臨床試験の成果を説明する古川教授

臨床試験の成果を説明する古川教授