18人の工場でロケット開発 植松さん講演
たった18人の町工場で経験ゼロからロケット開発を成し遂げた、植松電機(北海道赤平市)専務取締役の植松努さんが12日、和歌山市のホテルアバローム紀の国で講演した。植松さんは「どうせ無理」という言葉について、「努力は無駄だと教える最悪の言葉。『どうせ無理』に負けない人を増やしたい」と、ロケット開発に懸ける思いを語った。
県中小企業家同友会和歌山支部(内畑雅年支部長)の11月例会の一環。5月例会で「感動のプレゼンテーション」と話題の植松さんの「TEDx」動画を鑑賞して感銘を受け、北海道から招いた。
テーマは「社会から『どうせ無理』をなくしたい。~僕たちはなぜ宇宙開発に挑戦したのか?~」。会員ら約250人が参加した。
子どもの頃から宇宙に強い憧れがあった植松さんは平成16年、「カムイ式ロケット」の研究を進めていた北海道大学大学院の永田晴紀教授と出会い、全面支援を約束。同18年に人工衛星「HIT―SAT(ヒットサット)」の打ち上げに成功、同20年には1年間でカムイ式ロケット18機を打ち上げている。
従業員18人にロケットに造詣が深い者はなく、開発当初の打ち上げは爆発して失敗ばかり。「それはやったことがないことをやったから。一度しか生きることができない人間は、やったことがないことにしか出合わない。人間は必ず失敗する」とし、「『失敗したらどうする』に負けてはいけない。失敗は『だったらこうしてみたら?』で力になる。どうすればいいか、一緒に考えよう」と呼び掛けた。
また「全ての人にはすごい可能性がある。歴史はたった一人が変える」と、人間一人ひとりの尊さを強調。「人を殺してはいけないのは、その人の可能性を奪ってしまうから。『どうせ無理』という言葉で人の可能性を奪うのは殺人と同じだ」と訴えた。
「どうせ無理」と言われた人は自信をなくし、自信をなくした人はお金で自信を買ったり、人を見下したり、人の努力の邪魔をするようになるという。「『どうせ無理』をなくせば、いじめや児童虐待、戦争がなくなる。北海道の小さな町工場の宇宙への取り組みが広まれば、何か変わるかもしれない」とロケット開発への思いを話し、「『どうせ無理』を『だったらこうしてみたら?』へ。社会から児童虐待をなくしたい。皆さんの力を貸してもらえたらうれしい」と語った。
植松さんの「TEDx」は動画サイト・ユーチューブで見られる。「植松 TEDx」で検索。