国際コンテスト受賞 丹生都比売神社の照明

 和歌山県かつらぎ町の世界遺産・丹生都比売(にうつひめ)神社のライトアッププロジェクトが、北米照明学会(IES、本拠地=ニューヨーク)主催の国際照明コンテスト「2017IES Illumination Awards(北米照明学会照明賞)で「Award of Merit(佳作)」を受賞した。東京スカイツリーのライティングデザインでも知られる、シリウスライティングオフィス(東京)代表の戸恒浩人さん(42)が手掛けた。

 同コンテストは、照明学の権威として知られる北米照明学会が主催する、照明設計を対象とした国際的な照明デザイン賞で、その専門性や創意工夫、オリジナリティーを評価の対象としている。同賞は国際的なレベルで優れた貢献をした照明デザインに授与される。

 戸恒さんによると同神社は女神を祭ることから、荘厳な雰囲気に加え優美で柔らかい景色をつくり出すことをテーマにデザイン。暗闇と静寂の中に、神への道となる敷地内の建物のみを優しく浮かび上がらせた。

 また神社の特徴の一つである太鼓橋を、池にいかに美しく幻想的に映し出すかにもこだわったという。宗教的にも大切な意味合いを持つ神社の朱色が映えるよう、赤の演出法に配慮。夜の闇に浮かび上がる朱色と影がつくる景色が美しく見えるよう追求した結果、建物だけでなく組み物の影も美しく対称に現れ、厳粛な雰囲気を生み出した。

 ホテル日航東京チャペル「ルーチェマーレ」、浜離宮恩賜庭園「中秋の名月と灯り遊び」などの照明デザインを手掛ける戸恒さんだが、神社のライトアップは初めて。そのため思い入れの深いプロジェクトだったといい「完成した時は、天野の漆黒の闇に光が映え、想像を超えた美しさだった」と振り返る。「丹生(晃市)宮司や地元の方々と作り上げた光が海外の方の心にも響いたことは、非常にうれしい。夜の天野にある神秘的で美しい光を楽しんでもらい、地元だけでなく国内外にも魅力を広げていければいいですね」と話している。

 また、照明デザインを依頼した同神社の丹生宮司(62)は「ライトアップすることで、神様の優しさや強さが表現されている。1700年以上前から祈りの中心とされてきた厳粛な雰囲気を味わってほしい」と話している。

 ライトアップは日没から約2時間。同神社はおおむね月1度の頻度で実施しており、23日、10月14日、11月3日に予定。民族楽器や雅楽の演奏とともに楽しめる。

美しく浮かび上がった本殿(シリウスライティングオフィス提供)

美しく浮かび上がった本殿(シリウスライティングオフィス提供)