福つかむ速駈詣り 紀三井寺で新春初開催
成人の日の来年1月8日、西国三十三所2番札所・紀三井寺(和歌山県和歌山市)で、楼門から最上段まで210段を一気に駆け上がり、参拝する「紀三井寺福開き 速駈詣り(はやがけまいり)」が初めて行われる。社会人らでつくるランニングクラブ・汗濁(あせだく)大学アスリートクラブと同寺が共催。現在参加者を募集中で、同クラブ代表の平川太一さん(44)は「紀三井寺が駆け上がりの聖地になれば。由緒あるお寺の石段を上がってお参りし、夢と福をつかんで」と参加を呼び掛けている。
決戦の舞台となるのは、本堂へ通ずる結縁坂(けちえんざか)。江戸時代の豪商・紀伊国屋文左衛門が母を背負って参る途中、玉津島神社の宮司の娘おかよと出会い、結婚と出世のきっかけになったとされる場所。商売繁盛や良縁成就に御利益があるとされる。
また、傾斜の急な石段は運動部の選手にとってトレーニングの場にもなっている。記録も残され、最上段までの最速は1988年のソウル、1992年のバルセロナと五輪2大会に連続出場した同市出身の陸上競技選手、青戸慎司さんの21・9秒。青戸さんは学生時代からこの石段で鍛錬を重ねてきた。現在指導する中京大学陸上部は今も年に2度和歌山で合宿を行い、同所を練習場所にしているという。
汗濁大学のメンバーが同所で練習する中、記録が書かれた看板が目につき、由緒のある場で健脚を競う企画ができないかと同寺に相談し開催が決まった。同クラブでは「多くの若い人に、ここから世界に羽ばたいてほしい」との願いも込める。
当日は上り専用階段のみを使い、2人ずつ計測。煩悩の数にちなみ108回実施、216人限定とする。上り切り、参拝した人には当日限定、当日発行の「御朱印入り速駈証」を進呈する予定。翌年の速駈詣りを目指し、実りある一年を過ごしてもらおうという試み。
また最速者の男性を「福結び速駈王」女性を「福結び速駈姫」とし、その年の紀三井寺の年中行事(初午、千日詣り)に参加してもらう。さらに約150㌢の「大しゃもじ」も用意。代々トップの名前と記録を刻んでいく。
同クラブでは「開催は毎年成人の日と決め、行事として定着するのが理想。足に自信のある選手から、昔は速かったという人、最近運動をしていないという中高年の方まで、ぜひ挑戦を」とPR。同寺の前田泰道貫主(59)は「石段を駆け上がり、運も上り調子に。祈りの心も忘れずに参加してもらいたいですね」と話している。
午前9時から。当日は最速記録保持者の青戸さんをゲストに迎える。参加費一人800円(参拝料込み)。中学生以上が対象。参加希望者はイベント支援サイト「イーモシコム」から申し込む。18日締め切り。