住民念願の拡幅へ 海南の城山トンネル

 県などは来年度から、 海南市の黒江地区と日方地区を結ぶ城山トンネルを拡幅する 「黒江築地線整備事業」 に取り組む。 現在は全長120㍍、 全幅5・9㍍で、 車2台が対向するのがやっと。 近年交通量が増えており、 歩行者にとって危険な状況だった。 事業では倍の全幅12㍍に拡幅し、 両側に幅2・5㍍の歩道を設ける。 来年度中に測量調査や設計を行い、 25年度に用地買収、 26年度に着工する。

 県は平成27年の 「紀の国わかやま国体」 までに間に合わせたいとしている。 拡幅されれば大きな消防車両が通れるようになり、 交通量も増えると予想され、 安全面や防災面、 経済面でも期待されている。

 県は来年度事業費として1500万円を見込んでおり、 市が6分の1の250万円を負担する。

 同トンネルは昭和27年の開通から60年近くが経過しており、 老朽化が進んでいる。 歩道なしの狭い道路で、 拡幅はかねて地域住民の願いでもあった。

 黒江地区は漆器業が盛んなため、 昔から工場が多く、 食品や生活用品などが買える商店が少ない。 地域住民が買い物に行くには、 同トンネルを通って日方方面へ出るのが一番近いという背景がある。

 約20年前から地元の自治会長らが中心となって、 県や市に拡幅を要望してきた。 工事に入るとトンネルは通行禁止となるため、 近隣商店への補償をどうするかなどが問題となり、 なかなか進まなかった。

 計画によると、 黒江地区から拡張工事を始める。 日方地区側の入口付近には車がUターンできる空間を設け、 知らずに進入してきた車に対応する。 トンネル内は円筒状の掘削機で横に掘り進めていく 「シールド工法」 で拡幅する。 トンネルの通行止めの期間は約1年半の見込み。

 黒江地区側では近隣に個人の駐車場があり、 地権者の協力もあって作業用工事車両の行き来もしやすくなった。 これまで県政や市政懇談会で拡幅を要望してきた黒江船尾地区連合自治会の冨士順一郎会長 (78) は 「地域の人の多大な協力のおかげで、 地域の長年の願いでもあったトンネルが拡幅される。 とてもうれしい」 と喜んでいる。