根来塗り風の乗用車で伝統工芸PR
伝統工芸を現代の生活に。 家庭用品販売、 ㈱サンコー(本社・海南市大野中)相談役、 角谷勝司さん(77)は、 漆器の町・海南をPRしようと、 根来塗りを現代風にアレンジした技法 「MODAN NEGORO」 (モダンネゴロ)を発案。 本来、 朱漆を上塗りし黒を研ぎ出す根来塗りに、 白の塗料から黒を研ぎ出すなど新色を加えた。 紀州漆器協同組合や、 紀美野町の自動車会社とタッグを組んで実現。 試作品として軽乗用車に施し、 今後、イベントなどでお披露目される予定。
平成19年から海南商工会議所の会頭を務めている角谷さんは、 海南の商業活性化を図ろうと、 伝統工芸の漆塗りを生かした今風の雑貨を作ることを同組合などに提案していた。
5年ほど前には、 角谷さんが同組合に依頼し、 同市の神出政己市長に漆器の洋式トイレを寄贈。 「いいPRになると思ったが、 人の目につかないところなのであんまり効果がなかった」 という。
「伝統工芸に一石投じるようなものを」 と頭を悩ませていたところ、 町中を横行する車に根来塗りを施すことをひらめいた。 漆は紫外線に弱いため、 車用の塗料を使用し、 生活に違和感なく溶け込むよう、 白の塗料などでアレンジすることにした。
角谷さんと旧知の仲だった㈱なかモーター自工 (紀美野町動木) が塗装を担当。 同組合の㈱橋本達之助工芸 (海南市多田) などが中心になり、 根来塗りの指導を行った。
バンパーや車体部分など素材によって塗り方を変えなければならず、 何度も試し塗りしたという。 よりオリジナリティーを出すため、 数年前に武部勤衆院議員が描いた角谷さんの似顔絵を施した。
なかモーター自工の専務、 田中祥秀さん(37)は 「根来塗りというと、 盆やおわんなど日本の古風なイメージだったけど、 どんな世代の生活にも溶け込むようなものができた。 少し変わった面白い技法。 車を宣伝塔に、 家具などにも波及できるのでは」。 角谷さんは 「ちょっとしたアイデアで他にはないものができる。 伝統を守るだけでなく、 はみ出てみることが新しいものづくりにつながる」 と話している。
今後、 同技法をブランド化し、 インターネット通販などで広めていく構想もあるという。