地方創生へトークイベント等 日本生命和歌山支社

地域貢献を目的に、地元企業の活性化につなげようと日本生命保険相互会社和歌山支社(和歌山市八番丁、加賀伸正支社長)はこのほど、和歌山市内で初となる地域貢献イベントを実施した。まちおこしの専門家によるトークセッションや、民間企業の主催としては珍しい大規模なビジネスマッチングに、県内外からそれぞれ200人以上が参加した。産官学が一体で和歌山の未来を考え、企業や自治体、団体が輪を広げる盛大な催しとなった。

和歌山の地方創生について考えるトークセッションは和歌山市七番丁の和歌山城ホールで開かれた。県、紀の川市、㈱紀陽銀行が後援。企業や一般、自治体、大学生など県内外から幅広い分野の200人以上が専門家の話に耳を傾けた。
テーマは「どうなる和歌山の地方創生?ウェルビーイングとローカルファーストを考える」。地域活性化やまちづくりが専門の和歌山大学の足立基浩副学長と、㈱ニッセイ基礎研究所の小口裕研究員が講演し、ディスカッションをした。司会は同大で足立副学長の研究室「足立ゼミ」の卒業生であるフリーアナウンサーの川田裕美さん。


足立副学長はケンブリッジ大学大学院土地経済学研究科卒業。国内約300カ所、海外10カ国以上での調査を基に、全国の街の活性化に向けて経済学や経営学の理論と現場をつなげる「まちづくり論」を中心に研究している。2013年に内閣府中心市街地活性化推進委員会委員を務めた。著書に『シャッター通り再生計画(ミネルヴァ書房)』『イギリスに学ぶ商店街再生計画(同社)』『新型コロナとまちづくり(晃洋書房)』などがある。
川田さんは大学卒業後、読売テレビに入社。「情報ライブミヤネ屋」のMC抜擢で全国区で人気となり、情報番組からバラエティーまで幅広く活躍。フリーに転身し、現在は二児の子育てに励みながら「THE TIME」などに出演している。県内企業のテレビCMにも起用され、16年に和歌山市観光発信人に任命された。
「縮小」を前向きに
小口研究員は県人口の現状について、「若者流出は近畿でワースト2。高齢者すら減少する深刻な状況」と示しながら、賃金面で医療・介護分野が全国平均を上回るという雇用吸引力などの強みを例示。人口・雇用・観光・消費・交通のデータから県の実態を紹介した。その上で人口減少と高齢化社会の「縮小」傾向を「前向きな転換」と捉え、「効率性・質の高さ」に価値を置いたコンパクト化や調和、循環、持続性の大切さを伝えた。ウェルビーイングを軸に若者・高齢者・観光・福祉と地域社会との有効な関係性も示した。
足立副学長は「皆さんは、『和歌山が〇〇のまちだ』と何個言えますか?」という問いかけからスタート。「これが10個言える人は少ない」と話し、所得に対する食費の割合が全国的に高い一方で、酒類消費量が全国で最下位クラスにあることなど県民の傾向を紹介した。
さらに「地域の個性を生かして育てることがまちづくり」として、AI活用や週末ビジネス、移住者の創出、観光地のコンベンションセンター化、教育施設誘致などを仮説的に提案した。過去に同ゼミがぶらくり丁商店街で経営したカフェを例に、大学生が地域と関わることの重要性も強調し、「まちづくりは宝探し。和歌山には宝がいっぱいある。地元企業などをもっと大切に」と呼びかけた。
川田さんは「現在住んでいる東京での子育ての苦労話を紹介し、「和歌山は歴史が残っていて緑地もあるのが魅力。ポテンシャルが高いまちだと改めて考える時間になりました」と話した。
参加者で紀陽銀行事務システム部の小畑あゆみさん(31)は「和歌山について再発見できた。つい大阪に出て買い物をしがちだが、県内のすてきなカフェに行ってみたいと思った」、元兵庫県三木市職員で現在はAIコンサルタントを営む藤田崇史さん(53)は「町の企業・住民主導のまちづくりに関心が持て、住民主導の可能性を感じた。大学生のムーブメントなど市民協働になれば、いい取り組みだと思う」、同大学経済学部4年で足立ゼミで学ぶ宮﨑一輝さん(22)は「視点が面白くて新しい発見があった。12月に市内でゲストを招いて、まちづくりのためのカフェをするので参考になった」と話していた。
ビジネスマッチング盛大に 多様な業種がPR、商談会も

同支社はこの日、和歌山市七番丁のダイワロイネットホテル和歌山で大規模なビジネスマッチングを初めて実施した。企業PRや個別商談会、「日本一明るい経済新聞」の竹原信夫編集長による講演があり、企業や自治体職員ら約200人が参加した。
基調講演で竹原編集長は、これまでの中小企業の取材経験から得た「元気な会社に共通する『あいうえお経営』」を紹介。「あ:経営者が明るい」として「経営がうまくいかないような“泣きたい時”ほど笑いましょう」、「う:決して強運の持ち主ではなく、運が強いと思い込んでいる人」、「え:縁を大切に」などと軽快に竹原節を披露した。「皆さん強い意志を持って頑張りましょう。また誰か困った人がいたら、ちょっと手を差し伸べませんか」と呼びかけた。

会社の現状を発信
企業PRではWIB(和歌山イノベーションベース)、㈱岩谷、㈲丸三商会、丸和ニット㈱、ソフトバンク㈱など6社がプレゼンテーションをした。それぞれに竹原編集長が感想や疑問を投げかけ、会場からは時折笑いが起こっていた。
丸和ニットの発表では国内で販売される衣料のうち、日本製がわずか1・5%という話題にふれ、同社が創業時から使う年代物の機械について竹原編集長が「今、古いものの良さが求められています。軽くていいジャケット製品ですね。どこで売ってますか」と発表者にインタビューをした。
受け入れ企業と外国人材とのマッチングに携わる和歌山STK事業協同組合から登壇した久保良太理事(39)は「外国人労働について知られていない今の状況やニーズを伝えたい。説明会を自分たちだけで開催するのは難しく、これほど多業種の人が集まる大規模な機会はなかなかないので意義がある」と話した。
竹原編集長は「和歌山にも元気で面白い会社があると気付き、取材に行きたい会社をいっぱい見つけました」と笑顔で話していた。
日本生命独自のネットワークを生かした個別商談会も実施された。全国に事業所がある大手の建設、小売、百貨店、通信サービスから、地域の多種多様な中小企業まで62社が参加し、のべ70組が商談に臨んだ。当日受け付けも可能で、取り引き先の開拓を目指し、多くの企業が参加した。
新規開拓の契機に
商談に参加した上下水道マンホールのふたなどを製造する御坊市のニシプラ㈱取締役社長の山本和磨さん(46)は大手企業2社と商談を終え、「自分から売り込んでいく貴重な機会になり、存在を知ってもらう第一歩を踏めた。和歌山から発信していきたい」と話していた。

名刺交換会では企業や自治体など多岐にわたる分野の人々が積極的に参加。有田川町から参加した行政書士の赤山卓也さん(41)は「これから関わっていけたらと思う出会いを得られた。自分が直接関わらなくても仲介することで周りがつながり、信頼が得られたら良い」と話した。

加賀支社長は「どうやったらお役に立てるのか、何ができるのか。一過性で終わらない地域貢献を目指して開催した。全国に和歌山の魅力をPRしていただき、皆さまに新たな気付きの場となれば」と話していた。
地域に根差した企業へ
日本生命保険相互会社 和歌山支社支社長 加賀 伸正

日本生命はことしで創業136年目になり、和歌山支社は創設から110周年の節目を迎えることができました。関係者や地域の皆さまには心より感謝申し上げます。
日本生命は創業当時から社会と企業のサステナビリティの両立に取り組んできました。それは企業活動を行う上で土台となる社会を大切にし、社会課題の解決を通じて地域や日本全体の持続的な成長に貢献することだと考えております。私たちは地域に根差した企業として各自治体と包括連携協定を結び、健康増進や交通安全、地域経済の活性化につながるさまざまな取り組みに努めております。職員一人ひとりが「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の使命感を持って活動しております。
近年、人口減少や少子高齢化などの課題に直面する一方で、和歌山の豊かな自然環境、特色ある産業、人と人とのつながりを生かした新たな地域づくりの取り組みが各地で進められています。ことし6月、地域創生の第一人者である和歌山大学の足立基浩副学長に、より有効な地域貢献の在り方について相談させていただいたことから、産官学が一体となってこの催しが開催できました。参加者の方々には和歌山が持つ魅力を改めて認識いただき、未来を共に考える貴重な時間となりました。
これを機に企業様同士の新たな接点が生まれ、企業活動の促進の一助となれば幸いです。接点の輪をさらに広げ、和歌山の地域の方々のお役に立てるよう、これからも職員と一丸となって引き続き精一杯努めていきます。


