黒潮市場が運営 新しいマリーナシティへ
黒潮市場(和歌山市毛見、田尻賀大社長)が、米投資ファンド「エートス・ジャパン」から和歌山マリーナシティ運営会社ロイヤルパインズの全株式などを取得し、マリーナシティ全施設を自社の一元管理下に置いた。先月1日から新体制での運営を始めており、地元企業ならではのネットワークやノウハウを生かして施設一体となった運営で集客を強化することで、相乗効果を生み出し、地元経済の活性化へとつなげる方針だ。田尻社長(53)が本紙の取材に応えた。
当初から交渉 和歌山市沖の人口島である和歌山マリーナシティは、松下興産(当時)と県が中心となり平成6年に開業。その後、ロイヤルパインズがロイヤルパインズホテル、テーマパーク「ポルトヨーロッパ」などの施設を運営してきたが、同17年、外資系ファンドに運営権が移った。
約2年前、マリーナシティ売却の話が浮上。韓国、中国など国内外の投資家が買収に向けて動いていたものの交渉の折り合いは付かなかったとみられる。ことしに入り、当初から交渉を続けてきた黒潮市場が取得する方向となった。取得額は非公表だが、数十億円と推察される。
ソフト面を充実 黒潮市場は、松下興産(当時)が直営事業をテナント化したことを受けて15年に開業。執行役員だった田尻氏が20年に全株式を取得し、社長に就任した。
同社はマリーナシティ内では、生鮮魚介類や土産物の販売、飲食店などを手掛け、県のプレミア和歌山にも認定されているマグロの解体ショーなどは県内外に広く周知され、人気を呼んでいる。
今後は黒潮市場に加え、今までロイヤルパインズが運営していたロイヤルパインズホテル、ポルトヨーロッパ、ヨット倶楽部、紀州黒潮温泉、海釣り公園の運営も行う。
和歌山マリーナシティは年間100万人を超える集客力を持ち、ホテルの稼働率は連休時は全99室が満室となる。現在、新事業の企画を進めており、ホテル朝食でのマグロ解体ショーといったイベントなど、ソフト面を主に充実させていくという。
笑顔になれる場に 集客面では、関西空港からのLCC(格安航空会社)利用客や団体客の誘致に取り組むという。課題は、マリーナシティと市内の観光ができるような公共交通を使ったインフラ作りなどを示した。
田尻社長はマリーナシティの開業以来、鮮魚や仕入れ部門などの責任者を務めてきた。「ここで人生の大部分を過ごしてきたので思い出深い。『再び外資に購入されるのなら』と引き継ぐチャンスと手を上げた。親しみやすく気軽に来てもらい『楽しかった』と笑顔になれる場所にしていきたい」と話した。
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今回の買収では紀陽銀行、商工組合中央金庫、日本政策金融公庫から協調融資を受けた。各機関の担当者によると黒潮市場の決算実績、豊富な観光資源とその可能性、相乗効果による地元活性化などを加味したという。