モダンな日本画 野長瀬晩花記念展

近代の京都画壇で活躍した田辺市出身の日本画家、野長瀬晩花(のながせ・ばんか、1889―1964、本名弘男)の没後50年記念展が、12月7日まで県立近代美術館(和歌山市吹上)で開かれている。未公開の絵画資料を合わせ70点を展示。交流のあった画家3人の作品も紹介している。

晩花は10代半ばから大阪で円山派の中川蘆月(ろげつ)に学び、京都の歴史画の大家・谷口香●(こうきょう、きょうは山偏に喬)に師事。秦テルヲや竹久夢二らとも交流を深めた。ヨーロッパ留学などを経て、ポスト印象派など西洋美術に影響を受けた作品を多く手掛けた。

同展では、これまであまり知られていなかった、初期の絵画学習の様子が伝わる写生などの資料も多数展示。歴史画の写しには、原画にはない色彩が添えられたものもあり、晩花独自の女性の柔らかい表現が加えられている。

京都画壇のデビュー作となった明治44年の「被布着たる少女」は鮮烈な色彩で、着物の柄を荒い筆使いで描写。西洋の人形などが描き込まれ、当時としてはモダンで新しい表現だったという。

担当する同館の藤本真名美学芸員(27)は「海外の美術を取り入れ、新しい日本画をどうつくり上げていくかを課題としていたようです」と話す。女性のしなやかさや妖艶さを追求し続け、大正に入ると、ゴーギャンに感化されて関心は女性の健康美へ。農婦や大原女を描いた作品を数多く残している。

同館では「自由奔放、奇抜で斬新なイメージの強い晩花ですが、堅実に学んでいた面もあり、そのギャップを楽しんでもらえれば」と呼び掛けている。

フロアレクチャー(学芸員による展示解説)は13日、11月15日の午後2時から行われる。問い合わせは同館(℡073・436・8690)。

モダンな作品が並ぶ会場

モダンな作品が並ぶ会場