稲むらの火の館とアチェ津波博物館が協定
安政南海地震(1854年)の際に住民の命を津波から守り、「世界津波の日」の由来となった濱口梧陵を記念する広川町の津波防災教育施設「稲むらの火の館」は16日、約24万人が犠牲となったインド洋大津波(2004年)で甚大な被害を受けたインドネシア・アチェ州のアチェ津波博物館と協力協定を結んだ。同町で調印式が行われ、津波防災の情報交換を進めることなどを確認した。
昨年11月、日本インドネシア文化経済観光交流団団長としてインドネシアを訪問した和歌山3区選出の二階俊博衆院議員(自民党総務会長)が、両館の協定を提案。阪神淡路大震災から21周年の今月17日に合わせて来日したアチェ津波博物館のトミー・ムリア・ハサン館長が稲むらの火の館を訪問し、調印となった。
調印式では、西岡利記広川町長とハサン館長が協定書にサイン。二階議員、仁坂吉伸知事、ユスロン・イザ・マヘンドラ駐日インドネシア大使らが立会人となり、両館の協力関係を祝福した。西岡町長は「連携を密にして、お互いに津波に関するいろいろな情報を伝え合っていきたい」と述べ、ハサン館長は「協定締結は大変うれしい。両館が経験を生かし、防災教育などさまざまな面でやりとりしていけることを願っている」と話した。
二階議員は「世界津波の日が制定され、国際的に津波問題に対する理解を深めていく努力をしなければならないが、きょうはそのキックオフのような意義のあること」「津波災害の恐ろしさは本当にこたえるものだが、人間はつい忘れがち。正確に語り継いでいくことが大事だ」「アチェの皆さんの苦闘の歴史をわれわれも勉強し、共に自然災害に立ち向かう決意を固めていきたい」と述べた。
アチェ津波博物館に対して記念品の贈呈があり、県からは「稲むらの火」の映像DVD(インドネシア語・英語字幕)、濱口梧陵や世界津波の日の紹介パネルなど、広川町からは稲むらの火の館のPR映像DVDとパンフレット、二階議員からは液晶テレビとDVDプレーヤー一式が贈られた。
調印式終了後、稲むらの火の館敷地内に記念のナツツバキの植樹を行い、ハサン館長、マヘンドラ大使らインドネシアからの一行は同館の施設を見学した。
また、同日夜、町民体育館で「稲むらの火 11月5日『世界津波の日』制定記念の会」が開かれ、町民らが集まった会場でハサン館長が特別講演を行った。