絶景の宝庫和歌の浦と湯浅を登録 日本遺産

地域の歴史的・文化的魅力を語るストーリーを認定する文化庁の本年度の「日本遺産」に、県内から「絶景の宝庫 和歌の浦」(和歌山市、海南市)と「『最初の一滴』醤油(しょうゆ)醸造の発祥の地 紀州湯浅」(湯浅町)の2件が選ばれた。4月28日の発表を受け、大型連休後半を前に現地を訪れる人々の増加も期待される。県内の認定は昨年度の「鯨とともに生きる」(太地町)に続き2年連続、計3件となる。

日本遺産は、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を国内外に発信し、地域の活性化を図るもので、平成27年度に創設された。本年度は全国で17件が認定され、計54件となった。

県内から2件が認定され、仁坂吉伸知事は「大変うれしい。情景や歴史・伝統が受け継がれてきたことが評価されたと考えている。認定を契機に、受け入れ体制の整備や認知度向上などに取り組んでいく」とコメントしている。

「絶景の宝庫 和歌の浦」は、雑賀崎から藤白坂にかけての和歌浦湾一帯に所在する文化財31点で構成。干潟や砂浜などの自然景観、玉津島神社や紀州東照宮などの神社建築、漆器作りの歴史が残る黒江の町並みなど、多様な魅力が盛り込まれている。

和歌の浦の美しさは古くから知られ、聖武天皇や豊臣秀吉、松尾芭蕉らが訪れている。聖武天皇は即位の年に訪れ、干潟が刻々と変化する様子や名草・玉津島両山の景色に感動し、景色を末永く守るよう命じたと伝えられる。平安時代には、和歌の浦の美しさをたたえる歌が紀貫之により『古今和歌集』で改めて取り上げられ、それをきっかけに和歌の聖地としても知られるようになった。

県と和歌山・海南両市は、昨年5月ごろから申請に向けた準備を開始。和歌の聖地としての性格を強調する案も有力だったが、より外国人観光客へのPRに効果的という意見もあり、絶景の多さを知ってもらうテーマ構成とした。県と両市は遺産の活用などを考える協議会の設立を予定し、シンポジウムの開催などを検討している。

和歌の浦の魅力を発信する活動に取り組む地元の人々にも認定の喜びが広がっている。

和歌浦の自然や文化を守ろうと、平成24年に結成された「名勝和歌の浦 玉津島保存会」は、和歌浦について主に文化財の視点から発信しようと、講演会や書籍の刊行などに取り組んでいる。美しい景観を後世に残すことを主な活動としているのは平成23年に結成された「名勝和歌の浦クリーンアップ隊」。地元住民30~40人程度が毎月1~2回、日曜日に名勝指定地の清掃活動を行っている。

両方の活動に関わっている渋谷高秀さん(64)は「和歌の浦の魅力が評価されてうれしい。日本遺産に認定されることで、詳しく説明しなくても、価値の高さを分かってもらえるのではないか」と話している。

「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」は、湯浅町が醤油づくりの発祥地であり、現在も醤油醸造業に関連する町家や土蔵が建ち並ぶ様子を紹介している。

同町は歴史的資源を生かしたまちづくりを推進しており、町産業観光課は「認定は大きな励み。今後は観光客の受け入れ体制の強化を進めていきたい」と話している。

和歌の浦の干潟から飛び立つ鳥(県提供)

和歌の浦の干潟から飛び立つ鳥(県提供)