現代版画の代表作一堂に 近代美術館企画展
日本の近現代の版画の代表作を集めた企画展「現代版画の展開」が6月25日まで、県立近代美術館(和歌山市吹上)で開かれている。現代美術の新しいジャンルとして日本の版画が注目されるようになった1950年代から現代までの名品や話題作84点を紹介。時代背景とともに変化する技法や主題が見て取れ、同館の井上芳子学芸課長は「『版画って何?』とあらためて問い掛けるような展覧会。版画の幅広さを感じてもらえるはず」と話している。
会場では、県出身の版画家・浜口陽三の実力を世に知らしめるきっかけとなった「スペイン風油入れ」や、抽象表現の先駆けとされる恩地孝四郎の丸みを帯びた形をモチーフにした作品など、地元ゆかりの版画家らの代表作を紹介。
井上学芸課長によると、その後60年代はポップ・アートが美術シーンを席巻し、引用・複製されたイメージの表現に版画が多く使われるように。70年代はコピー機の出現で、先鋭的な作家たちが自分たちの表現に取り入れていったという。
「東京国際版画ビエンナーレ」で注目された、方眼紙上に鉛筆をモチーフに表現した木村秀樹の作品なども展示され、井上学芸課長は「印刷技術が進み、版画と写真の間の境目がなくなっていきました。机の上で彫るだけでなく、新しい技術を取り入れながら『版画でこんな表現ができる』と、さまざまな試みをしているのが現代版画の面白い点」と話す。
また今展では、同館で昭和60年から5回にわたって開かれた「和歌山版画ビエンナーレ展」の入賞作を紹介。作品の大きさは無制限、版画の複数性にこだわらず、1点制作物の応募を認めるなど、従来の版画の概念を拡大させる契機となった画期的な公募展で、当時国際的にも注目されたという。
ガラス板を使い、巨大な哺乳類の姿を表現した4㍍×9㍍の出原司の大作や、絵画と版画と写真を複合させた小枝繁昭の作品が存在感を放っている。
学芸員による展示解説は4日、6月3日の午後2時から。問い合わせは同館(℡073・436・8690)。