視覚障害チーム初出場 城まちリレーマラソン
フルマラソンの距離を仲間でたすきをつないで走る「第9回城まちわかやまリレーマラソン」(2日、和歌山県和歌山市の片男波海水浴場発着点)に、視覚障害のあるランナーが初めてチームを組み、出場する。発起人で、伴走を務める同市の松林正樹さん(44)は「視覚障害者のブラインドマラソンに関心を持ってもらいたい。伴走者が増え、ブラインドランナーがもっと多くの大会に出場できるよう、練習環境が整えば」と願っている。
全国的にブラインドランナーは増えつつあるが、伴走ボランティアについては、和歌山では認知度が低いのが現状。視覚障害のある人が走りたいと思っても、伴走技術を持つ人が少なく、個人練習の伴走者の確保に苦慮するという。
介護福祉士でもある松林さんは運動とは無縁だったが、5年前に一念発起して神戸市のフルマラソンに挑戦。その大会で伴走者の姿を目にし、興味を抱いたという。
大阪市の長居公園で開かれている講習会に参加し、伴走技術を習得。和歌山のランナーと知り合い、仕事終わりや休みの日に時間を合わせて練習するようになった。
2人の走者をつなぐのは、1本のロープ。「楽しく走りたい」「目標タイムの達成」など、伴走者はランナーの要望に応じて、歩幅や腕の振りに呼吸を合わせて走る。カーブや給水所の情報を伝え、コースの状況を説明するなど、安全に配慮しながらゴールへ導く。ブラインドランナーの体の一部になって走る感覚で、松林さんは周囲の景色が分かるよう、情景を説明することもあるという。
伴走のデビューは4年前、和歌浦のジャズマラソン(和歌浦ベイマラソンwithジャズ)。相手の息遣いを感じながら支え合ってゴールし、単独で走るのでは得られない一体感を味わったという。
4年間で和歌山や大阪を中心に、60ものマラソン大会で伴走。「個人競技でありながら常に支え合い、同じ目標を達成したときの喜びはとても大きい。僕自身も励まされています」。
今回、新たなランナーや伴走者を開拓し、ブラインドマラソンの認知度を高めたいと、視覚障害のあるランナー8人と伴走者10人でつくる「紀の国ブラインドランナーズ」を結成した。
ゴールしても、伴走者の名前は記録に残らず、陰の存在。「僕には完走証やメダルはないですが、同じ目標に向かって走り『ゴールできてうれしい』と言ってもらえるのが何よりの喜び」と松林さん。
松林さんの伴走でジャズマラソンに4年連続で出場している同市の井邊光治さん(63)は「『走りたい』という気持ちのある人は多いはず。松林さんは伴走者として基本的なことをよく知っていて、信頼できる。マラソンのすがすがしさを味わえるのは伴走してくれる人のおかげ」と感謝。
今回の出場の一番の目的は交流。普段はほぼ決まったペアで走るが、今大会では相手をシャッフルし、普段組んだことのないペアで走りを楽しむ。
2020年の東京パラリンピックに向け、全国的に視覚障害のあるランナーが増え、レベルも向上しているという。松林さんは「伴走者の確保が大きな課題になってくる。障害者スポーツにも理解が深まれば」と話している。