ベトナム「農」の現状学ぶ 紀の川市視察団

 ベトナムを訪問している紀の川市の中村愼司市長を団長とする視察団は2日目の28日、同国中部のダナンのホテルを出発し、隣接するクアンナム省各地を訪れ、農場や野菜の直売所を視察した。同国から日本への旅行者が増加している現状について、現地駐在の日本政府観光局(JNTO)職員からの説明もあり、理解を深めた。

 朝から強い日射しが照り付け、ダナンの気温は32度に達する暑さの中、一行はバス2台に分かれて省内各地を訪問。ビニールハウスでレタスの栽培が行われている現場を見学し、中山間地の村ではドリアンやボンボン(ランサット)などの果樹園へ。独特の香りで知られるドリアンの試食もあり、「甘くておいしい」と笑顔で味わった。

 農場関係者からは「ことしは干ばつがあり、水不足でなかなか作物をつくれない時期があった」との話もあり、同じく農業が盛んな紀の川市の一行は、自然条件や気候に左右される第1次産業の難しさを再認識した。

 夕方にはダナン市内の大通り沿いにある野菜の直売所を訪問。国際協力機構(JICA)と千葉県南房総市が約1年半前に共同で設立し、現在は地元企業が運営している。

 店内にはベトナム各地で収穫されたトマト、ニンジン、タマネギ、パイナップル、メロンなど豊富な野菜と果物が販売されており、一行はJICA職員から、直売所に集まった農作物の一部がクアンナム省の小学校の給食に採用されているとの説明を受けた。

 JICA職員の宗像哲平さんは「最近はダナンでも食の安全・安心に対する意識が高まっており、新鮮で安全な農産物を提供しようとする店が増えている」と話していた。

 夜にはJNTOハノイ事務所の高橋歩所長がベトナムの訪日旅行の現状について一行に説明した。

 ベトナム国内で中間所得層が増えたことに伴い、日本を訪れる人も毎年増加しており、他の東南アジア諸国に比べ就労や留学で来日する人の割合は大きいという。ベトナムから日本への渡航には査証(ビザ)が必要で、査証の代理申請などの手続きを旅行会社が行う。

 高橋所長は「旅行会社と連携を深め、ツアーをつくってもらうと、市場に入って行きやすい」とアドバイス。紀の川市職員らは、今後の交流促進に向け熱心に聴いていた。

 一行は29日、ダナンから北部の首都ハノイに移動した。

ダナンの野菜直売所を訪れた視察団