手話の音楽ステージ 下津高でKAZUKIさん

 海南市立海南下津高等学校(柳和希校長)は、聴覚障害があり、手話で講演や音楽表現に取り組むKAZUKIさん(31)を招いて人権学習会を実施。全校生徒約70人は、聞こえない人の不安感を思いやる大切さを学び、手話で盛大な拍手を送った。

 講演は「音のない人生」がテーマ。KAZUKIさんは誕生後間もない頃から多くの難病に見舞われたが、奇跡的な手術の成功や治療で乗り越えたことを話し「生きていることは当たり前ではない」と強調。

 生まれつき耳が聞こえないことで一般の学校では仲間外れにされたことがあり、「つらい気持ちを抑えながら、周囲を知る目の力だけで生きてきた」と振り返り「困っている人への思いやりを大切に、勇気を出して声を掛けて」と呼び掛けた。

 中学卒業後に進学した特別支援学校では手話を学び「人生に必要なコミュニケーション方法だと気が付いた。手話と表情で優しく話し掛けてくれ楽しかった」と、現在の活動への転機になったことを紹介。 

 次第に手話で歌詞にも親しむようになり「音楽は人生を豊かにしてくれる」と確信してからは、手話で歌の世界を表現する独自の「手話歌」を考案。ダンスも交えて全身で表現するステージを「サインパフォーマンス」と名付けた。

 パソコンで音楽を流し、わずかに聞こえる振動からリズムや音の高低を感じ取ることを、1曲に付き約300回繰り返してパフォーマンスを仕上げ、2014年から活動。テレビや各地のイベントに出演し、現在のレパートリーは約50曲になっている。

 壇上でKAZUKIさんは『小さな恋のうた』『未来へ』など4曲を披露。会場の生徒らは熱心に見入り大きな拍手を手話で示していた。

 講演後、食物科2年の林アリサさん(17)は「手話と表情で気持ちが伝わってとても楽しかったです」と笑顔。KAZUKIさんは選曲について「『未来へ』は母親を歌う曲なので、高校生に親への感謝を忘れないでほしいとのメッセージを込めた」と話していた。

 今回の招待は同校卒業生の長坂純菜さん(24)の紹介がきっかけ。長坂さんは舞台の下で、音楽のタイミングをKAZUKIさんに手話で示す「カウントマン」と、講演の手話通訳を務めている。

「手話歌」を表現するKAZUKIさん