病気の子にもチャンスを 保護猫カフェで譲渡
和歌山市榎原の保護猫カフェ「猫の道草」に併設された、猫エイズや猫白血病などの病気が原因で隔離が必要な猫のための「セカンドハウスNiko」でこのほど、初めて「りんご猫」とも呼ばれる、猫エイズにかかった猫の譲渡が決まった。同店では感染症や病気を抱える猫、保護猫支援に理解が広がるよう願っている。
店主の吉田藍さんは2019年3月に、野良猫や捨て猫を引き取り新しい飼い主を探す保護猫カフェを始め、これまで80匹以上の猫と新たな家族をつないできた。ただ、りんご猫の譲渡には、「隔離」による難しさを感じていたという。猫エイズを引き起こすFIV(猫免疫不全ウイルス)は、発症せず寿命を全うするケースも多く、人間には感染しない。一方、猫同士はトイレや餌の容器などからでも感染するため隔離が必要となる。
同カフェでも専用ハウスができるまでは、他の猫と隔離するため、2匹のりんご猫はケージ内で飼育されていた。ケージ内にいる猫を見ながら、「フリーな環境で、ストレスを少なく過ごさせてあげたい」、「他の人と触れ合うことで、本来の姿を見てもらって新たな家族を見つけるチャンスにつなげたい」という吉田さんの強い思いと、寄付金などの協力によって昨年9月、専用ハウスが完成した。
オープンから約10カ月後の6月末、初めて1匹のりんご猫の譲渡が決まり、今月もう1匹にも新たな家族が見つかった。吉田さんは「病気のある子たちなので不安もあったけれど、専用ハウスでフリーに過ごせる環境ができたことで、本来の姿や性格を見てもらえて、チャンスに恵まれたのですごくうれしい」と笑顔。
同所では、毎月第3日曜の午前11時から午後4時まで、猫をモチーフにしたグッズを販売するチャリティーバザーと譲渡会を開催。今月譲渡が決まった2匹目の黒猫「田ノくん」も譲渡会で新たな家族に出会った。
譲渡会中は他の猫と隔離するためゲージに入っていた田ノくんを見た家族が、「この子はどんな子ですか」と吉田さんに質問。殺処分が決まっていた田ノくんの経緯を涙ながらに聞いた家族が後日、「田ノくんが毎日夢に出てきた」といって再訪し、同所で田ノくんと触れ合いながら家族に迎え入れる決意をしたという。
吉田さんはこれまでの活動を振り返り、「いろんな方と知り合って協力してもらいながら、やっとここまでこられたなと感じる」と話し、「譲渡ボランティアやミルクボランティアなど、いろんな保護活動がある。中には、掃除や物資でサポートしてくれる方もいて、それぞれが今できることをしているという現状を知ってもらいたい」と願う。
現在、同所にはFeLV(猫白血病ウイルス)にかかった猫が3匹、カフェと合わせると40匹を超える猫たちが新たな家族との出会いを待っている。同ハウスの猫に会いたい場合、カフェの利用時にスタッフに声を掛け、猫の体調が良ければ案内してもらえる。
問い合わせは同店(℡073・407・1852=水曜、木曜定休、午前11時~午後5時)。