ハーブ栽培に情熱 紀の川市へ移住の米田さん

アフリカのルワンダ各地を巡った後、和歌山県紀の川市に移住した農学博士の米田基人さん(47)が化学合成農薬・化学肥料不使用のハーブの生産や加工販売を手掛けている。市の6次産業化コンテストで東京のデザイナーと共に、開発した液体ハーブ調味料(調香料)「xherb(クロスハーブ)」を紹介。ハーブ業界を盛り上げたいという研究者の思いが審査員の心をつかみ、最優秀賞に輝いた。

紀の川市役所から車で5分余り。山あいに約10棟の背の低いビニールハウスが連なる。この地でハーブ農園「米もと農園」を営む米田さんは、大阪生まれ福岡育ち。

小学生の時にテレビCMでアフリカの食糧問題を知り、解決したいという思いから、大学では農薬化学や土壌化学、遺伝子組み換え技術などを学んだ。植物の根に共生する菌根菌を研究するうちに微生物に興味を持ち転向した。

研究者になってからは、2012年に国際協力機構(JICA)の事業でアフリカのルワンダへ有機農法の支援のために専門家として派遣されていたが、栽培の経験を積むため「有機農業に理解のある紀の川市が最適」と、15年に移住した。ハーブ栽培を選んだ理由については、「微生物を使った栽培技術に加え、香りの可能性を探るため」と話す。

農業を営むのは初めての経験で試行錯誤の連続だったが、2、3年たってからようやく栽培技術が整ってきた。

19年から採れたてのフレッシュハーブの販売を産直市場やインターネットで開始。市の6次産業化コンテストを機に、スプレー型調香料のxherbを開発した。揚げ物やサラダなどにふりかけ、手軽に食卓に新鮮な香りを取り入れることができる。

米田さんが栽培しているハーブの数は年間30種類に及ぶ。8月からは、京都大学エネルギー理工学研究所(京都府宇治市)で微生物の研究を続けながら、加工販売を行う㈲OneHERBを運営。23年2月に向けて紀の川市認定ブランド第一号への準備中という。

また、10月を目途に調香料を使ったレシピを考案してくれる研究員と研究費を募りたいと考え、目標人数100人、目標額50万円のクラウドファンディングを開始する予定。

米田さんは、「ハーブの力で紀の川流域を盛り上げるために、将来は同市特産品の果物を使った新商品も作りたい」と意気込んでいる。

xherbは5種類。4㍉㍑800円、10㍉㍑1500円。詳細はOneHERBのホームページ(https://www.oneherb.co.jp/)。

丹精込めて育てたハーブと米田さん

丹精込めて育てたハーブと米田さん