文化財登録10年記念 県庁本館の見学会

和歌山県庁本館(和歌山市小松原通)が国の登録有形文化財となってから10年となるのを記念した見学会が24日に開かれた。一般社団法人県建築士会和歌山市支部事業委員会が主催。参加した約60人は、建築士案内のもと、知事室や県議会議場、屋上など、普段一般には公開されていない箇所を見て回り、文化財としての建物の価値を再認識した。

現在の県庁本館は3代目の庁舎。意匠は国会議事堂をモデルに、耐震性、耐火性に優れた爆撃に強い構造を目指して建てられ、1938年に完成した。45年の和歌山大空襲では焼失を免れ、その後は増改築をしながら受け継がれてきた。

県建築士会は2012年に県庁本館の価値や歴史をまとめた書籍を出版。建物の魅力を発信する活動が実を結び、2013年12月24日に文化財登録された。

この日がクリスマスイブであることにちなみ、見学会では、サンタクロースの帽子や衣装を身に着けた建築士が、古い写真資料などとともに解説。公式行事や表彰などが行われる正庁では、紀州漆器協同組合(海南市)の専門家や伝統工芸士も説明に参加した。木造部分は漆塗りであることや、額縁に二つの鳳凰が並び、雲形の装飾を施した格調高い「奉掲所」の漆塗りの仕上げなどについて紹介。伝統の技法で荘厳な雰囲気に仕上げていることを、修繕作業の写真を示しながら説明した。

知事室では、大理石で構成された壁付けの暖炉を備えているのが特徴であることや、戦後間もなく昭和天皇が宿泊した際のエピソードを紹介。この他、中央階段ホール、県議会議場や屋上などを巡った。

参加した同市の女性は「耐震性に優れた頑丈な造りだと聞き、戦禍もくぐり抜けてきたことに納得です。建築士さんの説明は、誰かに話したくなる情報ばかりで、建物の認識がずいぶん変わりました」と笑顔だった。

登録有形文化財の県庁本館を正面から眺める参加者

登録有形文化財の県庁本館を正面から眺める参加者