運転と移動を見直そう 高齢者向け講習会

高齢者に安全運転を継続し、運転を終えるタイミングを見極めてもらうための講座「地域での移動と生活を考える会」が11日、和歌山市西の和歌山交通公園で開かれた。県作業療法士会、県理学療法士協会、和歌山市第2層生活支援体制整備事業、同市地域包括支援センター名草の4団体が共催した。

高齢者による事故や逆走などのトラブルが絶えず社会問題となっているが、公共交通の不便さや1人暮らし世帯が増えている現実が自動車への依存を高めているとみられ、県内では、全国的に見ても免許返納率は低い。今後さらに深刻化することが見込まれることから、こうした状況を改善するために地域住民一人ひとりが「移動すること」について見直す必要があると、公共交通が不便といわれている名草、三田、安原に住む高齢者に声をかけ、全4回の講座を開設。

初回となるこの日は66~88歳の30人が参加した。県作業療法士会の鍵野将平理事が「加齢に伴う身体的・認知的変化と自動車運転」をテーマに講座。「運転をやめると認知機能が低下するなどマイナスな点もある。安易に運転をやめるべきではないが、衰えを自覚した上で運転をしてほしい」と注意点を解説。運転をやめたときのことを考えて生活していくこと、運転終活の必要性を話した。

運転に必要な能力を維持、増進するための脳と体のトレーニングを紹介し「衰えは止めることはできないが、ゆっくりにすることはできる」と毎日継続することを勧めた。

その後、参加者は体力や認知能力の測定、ドライビングシミュレーターやサポカー(安全運転サポート車)を体験した。

66歳の女性は「バス停まで歩いて20分ほどかかるから車がないとどこにも行けない。75歳までは乗っていたいと思っているけどいけるかな…」と不安そうな表情。

71歳の女性は「免許返納は全く考えていない。買い物はできなくなるし、行きたい所へ行けなくなるし、行動範囲が狭くなってしまう。きょう教えてもらった体操を毎日続けて長く運転したい」とやる気満々。

84歳の男性は「40年トラックの運転手をやっていたから運転は今のところ問題なし。返納したらどこにも行けなくなるから毎日ジムで体を鍛えている」と元気いっぱいの笑顔。

鍵野理事は「講座によって気持ちや行動、意識がどう変わったかアンケートを取り検証し、いろんな地域で行っていきたい」と話した。

今後は、交通事故多発地点や頻発する事故、車に代わる交通手段などについて講座を行っていく。

ドライビングシミュレーターを体験

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