近代美術館と全米日系人博物館 姉妹提携へ
和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上)は、米国ロサンゼルスの全米日系人博物館と姉妹ミュージアム提携を結ぶ。県ゆかりの渡米画家の作品収集と研究を重ねてきた近代美術館と、日系アメリカ人の歴史を収集、公開する日系人博物館が継続的な協力関係を結ぶことで、国家の枠組みを超えたトランスナショナルな視点に立った博物館活動を目指す。岸本周平知事が渡米し、現地時間の22日に締結式が行われる。
和歌山は、都道府県で6番目に多い約3万3000人の海外移住者をアメリカやカナダ、オーストラリアなどに送り出してきた全国有数の移民県。この背景から、近代美術館では開館当初から県ゆかりの渡米画家の作品を収集の軸とし、研究を重ねてきた。
日系人博物館は、日系アメリカ人の経験を共有することにより、アメリカの民族的・文化的多様性への理解と認識を深めることを目的とする博物館で、1992年に開館した。
両館の協力関係のきっかけは、2023年秋に県が主催した「第2回和歌山県人会世界大会」を記念する特別事業として近代美術館が企画した「トランスボーダー 和歌山とアメリカをめぐる移民と美術」展。
美術作品と併せて多様な移民史資料を紹介した画期的な展覧会となり、開催に当たっては県内の博物館や研究機関に加え、日系人博物館の全面的な協力を受けた。展示資料約200点のうち、26点が同館の所蔵品で、近代美術館が把握していなかった、新たな県出身画家の作品の発見もあった。
近代美術館が他の博物館施設と姉妹提携するのは初めて。両館はすでに、2度の国際シンポジウム開催、県内の学校と連携したオンライン授業などを実施しており、姉妹ミュージアム提携により、今後は専門職員の交流や合同調査研究、美術を通じた移民史教育などを行い、両館が協力する展覧会の実現も目指す。
岸本知事は「(日系人博物館は)多様性や公平性、包摂といった県がまさに目指している方向性とフィットする組織であり、(提携により)いろんな成果が期待できるのではないか」と話している。
岸本知事のロサンゼルス訪問は20~24日の日程で、姉妹ミュージアム締結式典への出席の他、県出身者が多く移住したターミナルアイランドの訪問、南加和歌山県人会との意見交換、現地スーパーでの県産食品販売フェアの視察などを予定している。