田中佑典「異次元の演技」 五輪逃すも健闘
体操のパリ五輪代表最終選考会を兼ねたNHK杯は19日、群馬県の高崎アリーナで最終日を迎え、和歌山県出身でリオデジャネイロ五輪男子団体金メダルの田中佑典選手(34)=田中体操クラブ=は合計340・392点で4位だったが、惜しくも代表入りを逃した。20代の実力者がひしめく中、ただ一人上位でしのぎを削った大ベテランは、「目標は達成できなかったですが、やり切った自分を誇りに思う今があります」と晴れやかな表情で語った。
NHK杯は、4月に行われた全日本個人総合選手権の得点を持ち点に、2日間で6種目を2回行った得点を加えた合計で争った。田中選手は五輪代表が自動的に決定する上位2人にわずか1・034点届かず、他の代表選手との組み合わせで団体総合に最も貢献できる選手を決める残り2枠にも選ばれなかった。
しかし、20代前半から中盤がピークといわれる体操男子にあって、34歳が見せた五輪代表への肉薄は、体操関係者、ファンを驚かせ、本人も「健闘も健闘じゃないでしょうか。24演技6種目を(全日本と合わせて)4日間、ノーミスでやり切ることができたので」と振り返った。
田中選手は得意の平行棒と鉄棒でとりわけ観衆を魅了し、2日間とも15点前後の高得点の演技をそろえた。
2日目の終盤、5種目の平行棒は、姿勢の美しさや各技の完成度が際立ち、リオ五輪のチームメート、元世界王者の内村航平さんにNHKの実況で「別次元に行ってしまった演技でしたね。僕もここまで行ってみたかった。ちょっと悔しい」と言わしめた。
最終種目の鉄棒でもベテランならではの熟練の演技を見せ、アテネ五輪団体金メダルの塚原直也さんは「理想の技術」と絶賛した。
田中選手は、演技の完成度、出来栄えを示すEスコアが全日本選手権決勝とNHK杯の合計で最も高い選手に贈られる「エクセレント賞」を受賞。「自分一人の力じゃなく、いろんなサポートがあって(体操が)できている。オリンピックに出た時とは違う景色を見られて、体操をやってて良かったなと思います」と笑顔だった。