和歌山産漆かき4年目 根来塗曙山会

ことしの「初鎌」を入れる池ノ上さん
ことしの「初鎌」を入れる池ノ上さん

根来塗曙山会(宗家・池ノ上辰山さん)は20日、和歌山県岩出市の県森林公園「根来山げんきの森」内に植えた漆の木から、ことし初めて漆を採取する「初鎌入れ」を行った。

同会は2007年に園内に50本の苗木を植樹。毎年下草刈りなどで手入れし、21年に初めて漆を採るまで育てることができた。

漆が採れるようになって4年目となる今回は、約10人の弟子たちと共に作業。最初に池ノ上さんが鎌で幹の皮をはぎ、専用のカンナで傷を入れる「初鎌入れ」をした。

太めの5本の木を選定し、弟子たちも漆かきの作業にかかり、傷からにじみ出てきた漆を一かきずつ丁寧に集めた。

ことし初めて漆を採ったという受講生の笠松法生さん(61)は「自然との関わりをすごく感じた。傷をつけ過ぎたら枯れてしまうし、大切に育てながら漆を頂いていかないと」と汗をぬぐい、同じく初参加の寺本佳織さん(42)は「1回の作業でたったこれだけの漆しか採れないことを学べた。漆は貴重だと教えていただいているのが実際に体験することで分かった」と感慨深げだった。漆かきの作業は今後、8月までに8、9回続けるという。

池ノ上さんは「初鎌入れは、ことしも漆を採るということを木に覚えてもらう儀式。毎年最初より2回目以降の方が量は多くなる」といい、「多いと言っても昨年も年間で300㍉リットルほどしか採れなかった。でも、いずれは和歌山県産の漆だけで作れるように植えた木を育んでいきたい。そのためにもみんなで作業をすることに意味がある」と話していた。

採取した漆は今後、不純物を取り除き水分を取り去る「黒目」という作業を経て、実際に塗れるようにできるという。

池ノ上さんは、400年以上生産が途絶えていた根来寺根来塗を復興。19年に文化庁長官表彰を受けた他、06年には桂宮宜仁親王殿下から優秀漆工技術者に選ばれている。